越谷の司法書士・行政書士事務所「美馬克康司法書士・行政書士事務所」
司法書士・行政書士による相続のオリジナル解説です。
裁判所の判決にあらわれた民事上のおもしろい事件を紹介しています。一部について、美馬が脚色を担当しています。ご興味のある方はぜひご覧ください。
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(大審院判決大正4年)
X女とY男は、 挙式を経て事実上の婚姻生活に入りました。
しかし、挙式に出た多くの人々が、「この結婚は、長続きしないかも」と、思っていました。
理由は、次の通りです。
X女は、村1番の美人で若いころから、多くの男が言い寄ってきました。
しかしながら、X女はプライドが高く、「オラと結婚できる男は、金持ちで、背が高く男前(ハンサム)に限る」と、言い寄る男を全く相手にしません。
そういうわけで、30歳を目前にしてしまいました。
大正時代の田舎のこと、女性の30歳前だと嫁のもらい手はありません。
一方、Y男はいわゆるマザコンであり、気の強い母親Aの言うなりで、嫁になる女性もなく、35歳まで独身で母親と2人暮らしです。
X女とY男を、見かねた村のおせっかい婆さんが、2人の結婚をまとめてしまいました。
結婚にあせっていたX女と、Y男の母親Aは、「相手は、誰でもいい」と、いう感じで、
X女とY男そしてAとの3人での生活がはじまりましたが、AはY男の身の回りの世話を全てやります。
そして、食事時にAは、Y男のため魚の骨をとってやり、風呂ではY男を洗ってやり、
そういうわけで、X女もついにキレました。
「こら、Y男。おまえは、オラと結婚したんだろう。だらしない男だ。おっかぁも、Y男
これに怒ったAは、「フン。年増女を嫁にしてやったんだ。いやなら出て行け。いいよ
ね、Y男ちゃん」と、逆ギレ。Y男は、下を向いたまま、仕方なくかすかにうなずきました。Yは、Xに対し、損害賠償をしなさい。
当事者は、真の意思で婚約をし、結婚式をあげたのです。
そうすると、Yは、正当な理由なくしてXを離別すべきではなく、婚姻を継続すべきで、しかし、Yは、これを怠り、婚姻の予約を履行しなかったのですから、これによって生じた損害賠償をする必要があります。
ただし、その損害賠償は、婚姻の予約の不履行ですから、債務不履行を原因とすべきです。不法行為を原因とすべきではありません。
(最高裁判所判決昭和44年)
X男とY女は、熱烈な恋愛をし婚姻を約束しましたが、X男の親の反対で婚姻届を提出しないままアパートを借り同居いたしました。
そして、同居後、すぐに子供ができ、親子3人仲良く暮らしていました。
X男は、会社にもY女との同居、子供の誕生を内密にしていたところ、上司に常務の娘A女との婚姻をすすめられました。
X男は、「常務の娘と結婚すれば、将来あわよくば社長も夢ではない」と、大いに喜びました。ところが実際は、A女は白痴で、家族も困っており、何とか社員の誰かとでも結婚させよ
うとしていたのです。
結婚すれば、「お荷物が片付いた」と、常務の家族も一安心というところだったのです。
そして不幸にも、X男に白羽の矢が当たったのです。
そんな事情もしらず、X男は、A女と婚姻した方が将来のために良いと考え、Y女に別れ話を持ちかけました。
驚いたY女は、「絶対に別れない。別れるくらいなら、あんたを殺してやる」と、すごい
剣幕です。ついにY女は、X男の心変わりにあきらめて、別れる決心をしました。
しかし、不憫なのは、子供のことです。Y女は、子供を嫡出子とするため、婚姻届を出しX男は、婚姻届を出した後、すぐに離婚届を出すというY女の誓約書をとった上で、やむ
なく婚姻届に署名・押印しました。
その日のうちに、Y女は婚姻届を役所に提出しました。
その後、X男が誓約書通り離婚をせまりましたが、Y女は気が変わり離婚に応じません。
怒ったX男は、自分には婚姻意思がなかったと主張して婚姻無効確認をもとめました。
X男の主張通り、婚姻は効力を生じないと解すべきです。
民法は、「当事者間に婚姻をする意思がないとき」は、婚姻は無効と規定しています。
「婚姻をする意思」とは、真に社会観念上夫婦であると認められる関係の設定をする意思です。したがって、当事者間で婚姻の届けについて意思の合致があって、法律上の夫婦といえる関係を設定する意思があっても、真に社会観念上夫婦であると認められる関係を設定する意思がなければ、婚姻は無効です。
本件の場合は、単に子供に嫡出子の地位を取得させるために婚姻届を出したものですから、「婚姻をする意思」を欠くものです。
よって、X男とY女の婚姻は、効力を生じません。
(最高裁判所判決昭和38年)
漁師の娘X女と、漁師見習いのY男は、村の青年団で知り合いました。
たいした娯楽のない田舎の漁師町では、若者は青年団に入会をして、毎夜のように団舎に集まり、酒を酌み交わしながら、とりとめのない話をしていました。
毎夜のように、若い男女が集まるわけですから、自然とカップルも誕生します。
なかには、なんとか恋人を見つけ出そうと、盛装で出席したり、眼をランランと輝かして
いる者もいます。
X女とY男も、お互いにライバルを蹴落とし(たいしたライバルではないですが)、無事
カップルとなりました。
X女もY男も、異性と交際するのは始めてなもので、2人とも嬉しくてたまりません。毎日がルンルン気分です。
X女とY男は、自然と深い関係になり、将来の結婚を誓い合い、青年団の寄り合いの帰路、浜辺や漁師の物置小屋で、情交関係を重ねるようになりました。
この村の青年団で成立したカップルは、ホテルなどは利用せず、浜辺や漁師小屋で密会するのが通常であり、ずいぶんと安上がりでした。
X女は、2年間に2回妊娠しました。
妊娠を機に、X女はY男に結婚を迫りますが、Y男に、「おいらが、一人前の漁師になるま
で待ってくれ」と懇願され、遠く離れた町で中絶をしました。
1年後、Y男は深酒がたたり、軽い胃潰瘍になりました。
漁を休んで療養中に、Y男は、通院先の病院の看護婦A女に好意をよせ、交際するようになりました。
Y男は、X女よりもA女の方が、「手に職がある」ので、将来自分も助かると考え、病気を
理由にX女に結婚を断りました。
驚いたX女は、「おめえの病気は、アタイが治してあげる。絶対に離れない」と、納得しません。
Y男は、「おいらは、胃がんなんだ。もう助からないんだよ。おいらの事は忘れて、他の男と夫婦になって幸せになれ」、と説得しました。
それでも、X女が離れないので、Y男は、思案に思案を重ね、最高のうまい考えを思いつきました。
「われながら良い考えが浮かんだものだ。」と、早速実行にうつりました。
Y男は、X女の父親に、「親父さん、おいらとX女は、将来を誓い合った仲だけど、おいらは胃がんで間もなく死ぬんだ。でもどうしても夫婦になりたいんだ。許してけれ」、と話しました。
驚いたX女の父親は、「ふざけたことをぬかすな。死神に大事な娘をやれるか。二度と近づくな」、と言って、Y男を追い出しました。
これを知ったX女は、「お父、アタイも22歳だ。ほっといてくれ、Y男と夫婦になるんだ」、と言い張るので、父親は、X女を自宅に閉じ込め監禁しました。
Y男は、計画通りX女と別れられたので、親兄弟もいない天涯孤独の身、村から出ていき、看護婦のA女と同棲し、事実上の婚姻をしました。
Y男の計画は、大成功でした。
1月後、父親から監禁を解かれたX女は、Y男を捜し始めました。
Y男の友人を1人ずつ訪ね、またY男の親戚を調べ1軒ずつ訪問しました。
X女も、初めての恋した男です。どうしても捜し出そうと、必死の形相です。
恐るべき女の執念です。
ついに、X女は、Y男とA女を見つけ出しました。Y男の心変わりに失意のX女は、どうしてもY男が許せなくなり、復讐の炎がメラメラと、
燃え上がってきました。
殺してやろうと思いましたが、X女に好意を寄せ始めたB男の出現で、「金をY男からとってやろう」、と考えつきました。
そこで、X女は、Y男は正当な理由なく婚姻予約を破棄し、X女の婚姻予約上の権利を不法に侵害したとして、慰謝料を請求しました。
しかし、Y男は、「婚約は成立していない」と、争いました
Y男は、X女に慰謝料の支払いをしなさい。
X女とY男の間には、次のことより、婚姻予約の成立は明確です。
(1) X女が、Y男の求婚に対し、真実夫婦として共同生活を営む意思でこれに応じて
婚姻を約していること。
(2) 婚姻を前提に、長期間にわたり肉体関係を継続していること。
(3) 結納の取りかわしとか、同棲をしていなくても、婚姻予約成立にはなんら問題がない
こと。
婚姻予約が成立している以上、不当にその予約を破棄した者に、慰謝料の支払い義務のあることは当然です。
Y男は、X女の社会的名誉を害していないことを主張しています。
また、X女に物質的損害を与えなかったとも主張しています。
しかしながら、Y男の主張が真実であっても、Y男は、責任を免れないのです。
(最高裁判所判例昭和37年)
X女は、美貌というほどではありませんが、何故か男好きの顔立ちで、そのうえプロポー
ションも抜群でしたから、言い寄る男も少なくありません。
男性に誘われれば、食事をご馳走になることより、一人暮らしのX女は、「食事代が浮いた」とばかりに、誰にでもついて行きます。
簡単に誘いに乗るX女に、男達も、「俺のカッコ良さに、X女もほれたな」と、まんざらでもなさそうですが、どの男ともデートは、一回限りで終わるのが通常です。
なぜなら、X女は、ものすごい大食いでした。
X女は、「食事に連れて行って。でも私、たくさん食べるけど大丈夫?お金ある?」と、事前に聞きますが、男性は決まって、「大丈夫、まかせろ」と 、言うのが通常です。
X女は、一週間の夕食のメニューを決めていますから、月曜日に誘った男は寿司、火曜日
の男は焼肉----と、その日のメニューの、行きつけの店へ連れ出します。
席に着くと、X女は、「勝手に注文していいかしら」と、男に聞き、返事も待たずに、まず三人前ぐらいを注文します。
そして、その料理がくれば、その場で五人前、さらに次の料理がくれば、五人前とどんどん注文します。
まさに、現代の、「有名な大食い女 ギャル曽根」です。食べる、食べる、食べるで、どの男も真っ青です。
しかも、時間無制限で、高級料理ばかり注文し、胃袋におさめます。
X女と顔なじみの店主は、売り上げ倍増、また倍増でニコニコ。
X女を誘った男は、ションボリ。
ある程度食べるとX女は、男に金を払わせます。
まだまだ食べれますが、男の金のことがあり心配だからです。
ほとんどの男が、その時点でホットして精算し、「じゃ、俺、用を思い出したから先に帰る」と、引き上げます。
なかには、金が足りず時計などを預け、翌日持参の哀れな男もいます。
このようにして、X女を誘った男は、食事の段階で沈没となります。
ある夜、いつものように男に、なんぱされようと街を歩いていて、Y男に声をかけられました。
X女は、いつものように食事をおねだりしたところ、Y男は、「おいしい店がある」と、連れて行きました。
X女は、あまりの美味な料理に、どんどん食べます。
ところが、いつもの男達と違い、Y男は、ニコニコしてどんどん料理を勧めます。
無制限一本勝負、限界の無かったX女が、ついにギブアップです。
しかし、Y男は平気です。この店の、オーナーだったのです。
X女とY男は、すっかり意気投合し深い関係になりました。
けれども、Y男には妻がいますから、結婚はできません。
それでも、X女は、毎日おいしい料理が無制限に食べられますから、Y男の愛人となりま
した。
そのうち、X女は、妊娠しましたが、誰しもが食べ過ぎて太ったのだろうと、分娩まで全く気づかれずに、すごしました。
突然に生まれた赤ん坊Aに、Y男はびっくり。
Y男は、現代の金銭に換算して、五千万円ほどの株券を、X女に手渡し、「これで何もか
も終わりにしてくれ」と、X女と別れました。
X・Yの子供、Aは大変優秀で、当時司法試験でダントツの合格者を出していた、C大学
法学部へ入学しました。
Aは、法律を学ぶ内に、自分の母Xと父Yの事を調べ、Y男に認知請求をしました。
Y男は、五千万円の株券を渡したので、Aは認知請求権を放棄していると主張しました。
法律に詳しいAは、認知請求権は放棄できない、と争いました。
子の父に対する認知請求権は、放棄できません。
なぜなら、その身分法上の権利である性質、およびこれを認めた民法の法意に照らし、
保護に価するからです。
Aの主張通りと解します。
(最高裁判所判例昭和44年)
X女は、甲・乙夫妻の一人娘として大切に育てられました。
高校を卒業すると、お茶・お花などの習い事を始め、花嫁修業中でした。
ところが、Xが19歳の誕生日に、父親・甲が突然死亡しました。
甲には、僅かですが借金があり、母親・乙も病弱のため、Xが働き始めました。
Xは、色黒で、太めの体格ですから、男性にモテルというタイプではありません。
しかし、そういうことは関係なくXは、仕事が終わるとまっすぐに自宅に帰り、病気で寝ている母親の看病をします。
母親・乙は、そういうXが不憫で、「仕事が終わって、すぐに帰らなくてもいいよ。友達とお茶を 飲んだり、映画に行っておいで」と、進言します。
けれども、Xは、「そういう友達はいないから」と、笑って いるばかりです。
会社で、Xの上司にY主任がいました。
Yは、風采のあがらない貧相な男で、仕事のミスも多く、たびたび上司に怒られています。
Yは、出世コースからも、完全にはずれ、会社ではほとんどの者から相手にされず、「よく会社も、クビにしないものだ」と、陰口をたたかれています。
しかし、Yは大変優しく、困った人には手を差し伸べ、会社の清掃人の手伝いもすること
から、清掃人など現場の人からは、慕われていました。
Yには、気の強い妻と、三人の子供がいます。
家庭では、妻に馬鹿にされ、会社では、同僚・部下にも馬鹿にされ、哀れなサラリーマンの典型的な存在でした。
Xが、21歳の秋に、母親・乙が死亡しました。
Xは、親戚もなく天蓋孤独の身となりました。
会社では、Xを哀れみ誰もが優しくしてくれます。
特にYは、毎日のように、会社帰りにX宅を訪れ、Xの亡き父母に線香をあげていきます。
「きもい」と思っていたYの優しさに、Xは、だんだん引かれ始めました。最初は、短時間で帰っていたYも、Xの手料理を食べて帰るようになりました。
Xが、Yを男性と意識し始めたのです。
Yの妻は、Yが毎晩遅く帰っても、また、夕食を食べなくても何にも言いません。
それほど、Yと妻の間は冷え切っていたのです。
XとYは、当然のように深い関係になりました。
Xは、「きもい」と、思っていたYのことが、まるで「白馬の騎士」のように見えます。
まさに、愛する者にとっては、「あばたもエクボ」に見えるのです。
Xは、Yと結婚をのぞむようになりました。
しかし、Yは、気の強い妻が離婚してくれるとは思えず、Xとの関係は遊び心です。
それでも、Yは、Xの歓心を得ようと、「妻と別れて、結婚する」と、詐言を用い情交関係を結んでいました。ついに、Xは妊娠しました。
Xは、これでYが結婚してくれると思い 、妊娠したことをYに告げました。
気の弱いYは、それを聞いて腰が抜けたのか、しばらく動けませんでした。
喜んでいるXの横で、真っ青のYがいます。
Yは、やっと正気に返り、「今回は、中絶してくれ」と頼みましたが、Xが承知するわけがありません。
Yは、怖い妻の鬼のような形相を想像しながら、必死に何度も、Xに中絶を頼みましたが、無駄です。
あくる日から、YはX宅を訪ねなくなりました。
Xは、会社でこっそりとYに、「帰りによって」と、言いましたが、YはX宅を訪ねることはありません。
怒ったXはYにたいし、「会社と奥さんにばらしてやる」と、手紙を渡しました。
すると、その夜YがX宅を訪ね、やっと工面した中絶費用をXにさしだし、「これで忘れて
くれ。頼む」と、一礼して帰って行きました。
卑怯なYの正体を知ったXは、Yに慰謝料を請求しましたが、Yに金はありません。
そのうち、会社にも二人の関係は、明るみになりました。
誰に知られようが、Xは怖い者はありません。
Xは、裁判で、慰謝料を請求しました。
これに対してYは、「Xは、妻子のいる自分・Yのことを知って情交したのだから、Xのみに不法の原因があり、慰謝料請求は認められない」と、反論しました。
Yは、Xにたいし、貞操を侵害したことについて慰謝料を支払う義務を負います。
理由は、次の通りです。
(1) 女性が、情交関係を結んだ当時、男性に妻のあることを知っていたとしても、女性の(2) すなわち、情交関係を誘起した責任が主として男性にあり、男性側の違法性が著しく大きい場合は、女性の男性への請求は認められます。
(3) 本件において、Yは、Xと婚姻をする意思がなく、単なる性的享楽のためにXと情交
関係を結んだのです。
一方、Xは、異性と接した経験もない若年です。
(4) Yは、Xの思慮不十分につけこみ、妻と別れて結婚すると詐言を用いて、Xを欺いた
のです。
(5) Xは、Yの詐言を信じ、結婚できると期待して情交関係を結んだものです。
(6) このような事実関係では、情交関係を誘起した責任は主としてYにあります。
Xの動機に内在する不法の程度に比し、Yの違法性は、著しく大きいのです。
よって、Yは、Xに対し、その貞操を侵害したことについて損害を賠償する義務を負います。
(最高裁判所判決昭和47年)
X男は、国の外郭団体に勤めています。
勤めはじめてから、すぐに両親を不慮の事故で亡くし、天涯孤独となりました。
そのため、生まれ育った実家で一人暮らしです。
父親の預金・有価証券を相続し、30歳の独身ですから、生活には全く困りません。
生来の酒好きのため、給与の殆どを飲み代にあてるのん気な男性でした。
勤務先では、仕事はのらりくらりと、遊びながらやっているようなものです。
しかし、5時の終業となると、がぜん元気になり、安いA居酒屋に一直線です。翌日は、9時の始業直前に出勤簿に判を押し、自分の机に書類をひろげます。
しかし、すぐに居眠りをはじめます。
ところが、一見すると、書類をひろげ仕事をしているように見えます。
X男の特技でした。
一眠りすると、席をたち、職場の他の部署をまわり話し込んでいます。
そのうち、X男の楽しみの昼食です。
職場の前の定食屋に、1番に入り、毎回「大盛り特別定食」を食べます。
午後は、満腹ですから居眠りから始まります。
眠りからさめ、少し仕事をしてから、女子職員の入れてくれたお茶とお菓子です。X男は、単純な仕事しかやっていません。
大切な仕事、複雑な仕事は、「おいらは、出来ねえよ」と、むしろ得意顔です。
そのため、誰もが、「アホを相手にするな」と、単純な仕事のみしか与えないのです。
5時になると、大急ぎで誰よりも早く職場を出ます。
たまに、X男に残業をたのむと、烈火のごとく怒ります。A居酒屋では、X男と中学時の同級のY女が、働いています。
Y女は、X男が職場では、「昼あんどん」とか、「5時から元気のX男」と、言われているのを知っています。
Y女は優しい女性で、「X男は、あたいが立ち直らせてやる」と、交際を申し込みました。
X男は、自分の亡くなった母親以外に、優しくしてくれた女性はいませんから、驚きました。
X男に、反対の理由はありません。
そのうち、Y女がX男宅に住み込み、事実上の夫婦としての共同生活がはじまりました。
X男は、毎日Y女の作った「特大弁当」を持って、出勤します。
居眠りと仕事は、相変わらです。
しかし、5時になると、一直線に向かうのは、A居酒屋ではなく我が家です。
居酒屋を退職した、愛妻Y女が待っている自宅なのです。
Y女は、居酒屋勤めの経験から、家庭の妻が主人を大事にしていれば、主人は、家庭以外では酒を飲まずに帰宅すると信じて、X男を大事にしました。
おいしい酒と手料理でつくすY女に、X男は毎日が楽しくてたまりません。
「今日は、何の料理かな」と、仕事中も考えていますから、いっそう仕事は遅くなります。
Y女は、X男と同居してから半年後に、X男に内緒で婚姻届を提出し、受理されました。
その後、X男は婚姻届が無断で出されたことを知りましたが、何も言いません。
それから、約10年間、X男とY女は仲良く暮らしていました。
ところが、X男が、職場の近くの喫茶店のZ嬢と親しくなりました。
X男は、Z嬢と結婚したいと思い、Y女と別れようと思いました。婚姻は、有効であり、X男の訴えは認められません。
たしかに、Y女の婚姻届けの際において、X男には届出意思はありませんでした。
しかしながら、X男の追認で婚姻は有効となります。なぜなら、次の理由からです。
(1) 婚姻届出当時、2人の間に、夫婦としての実質的生活関係が存在していること
(2) 届出意思を欠いたX男が、後に届出の事実を知って追認したといえること
以上により、婚姻は追認によって、届出の当初に遡って有効となるのです。
(最高裁判所判決昭和42年)
X男は、四国のA市の、中小企業B社経理課に勤めています。
地元の商業高校を、やっと卒業できた程度の能力です。
本人は、大学に行きたかったのですが、高校はどこの大学をも推薦してくれません。
仕方なく一般入試にチャレンジしましたが、30を超える私立大学・学部に全て不合格です。
高校の教員は、「コンクリートに頭をぶっつけるようなものだ」と、大学入試をとめました。
しかし、X男の夢は、大学で多いに遊ぶことだったので、受験したのです。
翌年、翌々年と2年浪人しました。
いずれの年も、40を超える大学を受験しましたが、どの大学も、「お呼びじゃない」でした。
さすがにX男の両親も、これ以上の浪人生活を許しません。
X男の、大学で多いに遊ぶ夢も破れました。
仕方なくX男は、簿記検定4級の資格を生かし、就職したのです。
商業高校出で、簿記4級というのは、大変珍しいことでした。
しかし、X男は、3級以上がパスしなかったのです。
就職先のB会社も、身体だけは丈夫なX男を、現場配置にしたかったのです。
しかし、たまたま経理課の職員に欠員ができ、X男以外に応募者もいません。
「簿記4級?、大丈夫?」と、経理課の職員は皆さん心配顔です。
しかし、X男は、「簿記4級資格を持ってて良かった。資格は人を助ける」と、ノーテンです。
当時は、電卓はなく、すべてソロバンでの仕事です。
X男は、「1、2、3、-----」と、一けたずつ 珠を弾くので、その遅いこと。
まるで仕事になりません。
経理課長は、人事課長に、「X男は、まるでだめお君だ。次を募集してくれ」と、頼みます。
人事課長も、募集をかけますが、あいにくと誰も応募しません。こんなX男ですが、一つだけ得意なのがありました。
歌謡曲とくに演歌を歌えば、抜群の歌唱力でした。
宴会では、みんながX男の歌声に聞きほれます。
X男が、会社の上司からほめられるのは、歌を歌う時だけです。
上司は、「X男君、おまえは道を間違った。会社を辞めて歌手になれ」と、勧めます。
会社を辞めてくれれば、万歳なのです。
X男もその気になり、「オトウ、オッカア、わいは会社辞めて歌手になりたい」と、言います。
しかし、両親は、「まあ、隣町の歌謡教室で、うでをみがいてからにしろ」と、引止めです。
X男は、両親の言葉に従い、隣町の歌謡教室に通いはじめました。
この歌謡教室は、もと歌手が引退して開業したものです。
X男は、「歌謡教室でも、わいは一番うまいだろう」と自信満々でした。
しかし、「井の中の蛙、大海を知らず」です。
X男よりも上手な者が、何人か教室に通っています。
あわよくば、歌手になろうと思っている連中ばかりです。
X男は、「まあ、少しはあいつらに負けるが、わいは『顔』でカバーしてるんだ」と、大きな誤解をしながら、へこたれずに毎週日曜日に通っていました。
歌謡教室には、女性も通っています。
その中のY女が、X男好みです。
X男は、Y女と交際をはじめ、一年後に結婚しました。
Y女は、X男がB社の「お荷物」であることも知らず、出来ちゃった婚です。
運悪く、胎児は死産でした。
それ以後、子供は生まれません。
いつしかX男の歌手への夢も途切れ、解雇されずにB社に勤めています。
X男・Y女が、結婚して20年がたちました。
大酒がたたり、X男の体調がすぐれません。
子供もいないことから、X男は、妻の老後を考えました。
「オトウから相続した山林を贈与するから、お前の老後の生活保障にしろ」と、山林を贈与する旨の意思表示をし、Y女も承諾しました。
Y女は、X男が気まぐれなので、「ねんのため、文書にしておこう」と、思い立ち、X男・Y女間で贈与契約証書を作成しました。
その後、X男は、胃潰瘍で入院生活となりました。
入院中に、X男は、看護師Zと恋仲となりました。
退院してからも、X男とZ看護師の不倫関係は続きます。
Y女は、「女の勘」で、それを看破し、遂に離婚騒動となりました。
離婚訴訟中に、X男は、「Y女に、山林を贈与したが、贈与契約を取り消す」との、意思
表示をしました。
Y女は、「あの山林は、あたいがもらったんだ」と、反論します。
しかし、X男は、夫婦間の契約取消しを主張します。
民法第754条の、「夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる」との、規定による主張です。
X男の主張は認められません。
理由は、次の通りです。
(1) 民法第754条の、「婚姻中」とは、形式的にも、実質的にも婚姻が継続していることです。(最高裁判所判決昭和31年)
X男は、九州の高校を卒業して、東京のA大学に推薦入学をしました。
高等学校長の推薦で、誰でも入学できるような大学です。
しかし、X男の両親は、「X男は、東京の大学へ入ったばい。難関を突破してえらかとよ」と、近所および親戚中にふれまわっています。
九州の田舎のことですから、「ほんに、東京大学とはえらかとね。素晴らしかとよ」と、
大きな勘違いをする人もいます。
地元ですっかり有名になったX男は、多額の合格祝い金をもらい、上京しました。
大学に斡旋された、アパートに住み、家具もそろえ、念願の一人暮らしです。
入学したA大学は、いわゆる三流大学です。
有名な国立大学に不合格となって、やむなく入学してきた秀才も、少しはいます。
しかし、ほとんどがX男のような、あまり優秀でない連中です。
入学式・ガイダンスなども終え、X男は、「演劇研究会」に 、入部しました。
演劇など興味もないのですが、入部しました。X男の入部した、「演劇研究会」には、「映画俳優への夢」を描いている者が結構いました。
しかし、X男は、ニキビ面で、小柄で、見た目はパッとしません。
どうしても、映画俳優には無理な気がします。
同期の会員の中でも、一番 劣っているようです。
しかし、X男本人は、「研究会の中では、おいらが1番か2番だな。」と、はりきっています。
A大学の演劇研究会は、6月に新人をふくめ、発表会を開催します。
X男は、「主役に抜擢されるかも?」と、あわい期待をしていました。
しかしながら、X男は、「村人その5」の、役です。
「村人その1」と、「村人その2」は、若干せりふがあります。
しかし、「村人その5」は、村人全員で、「そうだ、そうだ」と、言うだけです。
X男は、「おかしいな。ミスキャストだな」と、思いましたが、ともかく役をこなしました。
その後の、10月の発表会でも、X男は、その他おおぜいの役です。
やはり、「そうだ、そうだ」の、せりふだけです。
1年生は、殆どが、その他おおぜいの役であり、当然のことなのです。
しかし、X男は、「おいらが、主役にぴったりなのに」と、不満のようです。
そのうち、X男は、演劇研究会2年生のY女と、親しくなりました。
Y女も、「映画女優」を、めざしていましたが、パッとしません。
お互いに駄目な、X男とY女が、恋愛したのです。
2人とも、初めての異性との交際です。
毎日が、楽しくて仕方がありません。
そのうち、2人とも演劇研究会を退部し、同棲をしました。
そして、X男が20歳、Y女が21歳で、共に親の反対を押し切り、学生結婚をしました。
当時の学生結婚は、あまり例がなく、A大学でも有名になりました。
まわりの学生は、「すごい美男美女らしい」と、噂をしています。
しかし、現実にX男・Y女を見ると、誰もががっかりしたようです。
そんなことは関係なく、X・Yは、ルンルン気分で学生時代を過ごしました。
Y女に続き、X男もなんとか卒業し、就職しました。
大恋愛で結婚したX・Yですが、数年後、破局がおとずれました。
いわゆる性格の不一致およびX男の不倫です。結婚生活は、完全に破綻しました。
潔癖なY女は、X男を許すことができません。
X男は、不倫相手と同居し、Y女と別居状態となりました。
Y女は、X男に離婚の請求と慰謝料の支払いを請求しました。
第一審は、Y女の離婚請求を認めました。
しかし、慰謝料請求は、認められませんでした。
納得のいかないY女は、控訴しました。
第二審の高等裁判所は、Y女からX男への慰謝料請求を認めました。
これにたいして、今度はX男が、最高裁判所へ上告をしました。
X男は、慰謝料は絶対に払えないと、主張したのです。
X男は、不倫相手と結婚を考えていたので、Y女には金銭を与えたくないと、必死でした。
X男の主張する理由は、次の通りです。
(1) Y女は、財産分与請求ができるから、その請求をすべきである。
(2) 慰謝料請求は、X男がY女に、Y女の身体、自由、名誉などへの重大な侵害があって、不法行為が成立する場合に限るべきある。
上告棄却。
つまり、X男は、Y女に慰謝料を支払いなさい、との判決です。
理由は、次のとおりです。
(1) 離婚の場合に、離婚した一方は、相手方に対して財産分与請求ができます。
この請求は、離婚につき不法行為のあったことは必要ありません。
(2) 一方、離婚した場合の慰謝料請求は、損害賠償の請求です。
すなわち、相手方の不法行為によって離婚することになった、損害賠償請求です。
(3) このように、慰謝料請求権は、財産分与請求権とは、その本質を異にします。
(4) また、慰謝料請求は、X男の主張するように、狭く解する必要はありません。
身体、自由、名誉を害された場合のみ請求できるというのは、間違いです。
(5) このように解すれば、Y女は、財産分与請求権と慰謝料請求権のどちらかを、選択して行使できます。
(6) ただし、両請求権は、密接な関係にありますから、財産分与の額を定めるには、慰謝料を支払う事情も考慮されます。
(7) 裁判では、Y女は、慰謝料のみ請求しているのですから、当然認められます。
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