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司法書士・行政書士による相続のオリジナル解説です。
相続分入門は、相続についてはじめて触れる方向けの解説です。相続開始・代襲相続、直系尊属・兄弟姉妹の相続、相続欠格事由、推定相続人の廃除、相続の一般的効力、祭祀の承継、共同相続の効力、共同相続財産の管理・処分と分けて解説しています。

 

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法定相続分

  1. 相続分とは、共同相続に際して、各共同相続人が相続財産を承継すべき割合、すなわち各共同相続人が取得しうるべき相続財産の総額に対する分数的割合をいいます。この相続分は、まず、被相続人またはその委託を受けた第三者の指定によって決定されます。次に、指定がない場合には、民法の定めるところにしたがって決定されます。前者を指定相続分といい、後者を法定相続分とよびます。
     
  2. 子と配偶者が相続人である場合の法定相続分
    子の相続分は二分の一、配偶者の相続分は二分の一
     
  3. 子が数人ある場合には、全員で二分の一を取得し、各人の間に均分します。子については、男女の別、戸籍の異同、実子・養子の別、国籍の有無を問いません。

    具体的事例としては、次のような事例が考えられます。
    被相続人甲には、妻Aと子B・Cがおり、相続財産は3600万円とします。各自の相続は次の通りです。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×1/2=1800万円
    子B・Cの各相続・・・・・3600万円×1/2×1/2=900万円

     
  4. 直系尊属と配偶者が相続人である場合、直系尊属の相続分は三分の一、配偶者の相続分が三分の二です。直系尊属が数人あるときは、数人の相続分はこの三分の一を均分したものになります。父母が相続人になる場合、実父母、養父母の区別はなく、また父方母方の区別もなく、相続分は平等です。祖父母は、父母がいない場合に相続人となりますが、この場合も父方の祖父母と母方の祖父母の区別はありません。

    具体的事例として、被相続人甲の相続人は、妻A、甲の父母B・Cであり、相続財産は3600万円です。各自の相続は次の通りです。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×2/3=2400万円
    父母B・Cの各相続・・・・・3600万円×1/3×1/2=600万円

    さらに、次の事例の場合を検討します。
    被相続人甲の相続人は妻A、甲の養父母B・C、甲の実母Dであり、相続財産は3600万円です。各自の相続は次の通りです。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×2/3=2400万円
    養父母B・C、実母Dの各相続・・・・・3600万円×1/3×1/3=400万円

     
  5. 兄弟姉妹と配偶者が相続人である場合は、兄弟姉妹の相続分は四分の一、配偶者の相続分は四分の三です。兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は四分の一を均分したものになります。ただし、父母の一方を同じくする兄弟姉妹(半血兄弟姉妹)の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹(全血兄弟姉妹)の相続分の二分の一です。ここでいう父母には、実父母のみならず養父母を含みます。したがって、実父母あるいは、養父母のいずれかを同じくすれば、全血の兄弟姉妹となり、一方の実父母が他方の養父母である場合も同様です。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×3/4=2700万円
    全血兄弟姉妹B・C各相続・・・・・3600万円×1/4×1/2=450万円

    さらに具体的事例として、被相続人甲には、妻A、全血兄弟姉妹B、半血兄弟姉妹Cがおり、相続財産は3600万円です。各自の相続は次の通りです。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×3/4=2700万円
    全血兄弟姉妹Bの相続・・・・・3600万円×1/4×2/3=600万円
    半血兄弟姉妹Cの相続・・・・・3600万円×1/4×1
    /3=300万円
     
  6. 実親が嫡出でない子を養子とし、あるいは祖父が孫を養子とする場合には、親子間または祖父と孫間という血縁関係があるうえに、養親子という法定血族関係が重複して発生します。また、配偶者の一方が、他方の父母の養子となった場合に、兄弟姉妹という血縁関係の他に配偶者という身分関係が重畳的に存在することになります。このような場合に、相続が開始すれば、二個の身分を有する相続人は、二つの地位にもとづく相続分を加算したものを取得できるかは問題となります。
    戸籍先例は、婿養子である夫が被相続人である場合、その妻は妻としての相続分を取得し、兄弟姉妹としての相続分は取得しないとしています。
     
  7. 多数の学説は、一般的に二つの資格が両立し、相排斥しない場合には相続資格の重複を認めています。すなわち、配偶者の一方が、他方の父母の養子となった場合、配偶者と兄弟姉妹の資格は、相排斥しないとして相続資格の重複を肯定します。                                        

代襲相続人の相続分

  1. 代襲相続は、相続人たるべき子または兄弟姉妹が、相続開始前に死亡し、または相続権を失った場合に、その者の子または直系卑属によって行われます。民法901条は、この代襲相続人の相続分を定めています。一項は子の代襲相続人となる直系卑属の相続分について規定しています。また、二項は兄弟姉妹の代襲相続人である子の相続分を規定しています。二項は、かつて(改正前)は兄弟姉妹の代襲相続人は兄弟姉妹の直系卑属とされていました。しかし、かかる範囲まで相続人を拡大するのは、被相続人との親族的なつながりの面から問題がありました。また代襲相続人を探し出さなければならない点で、遺産分割に支障をきたすとの趣旨から、代襲相続人は兄弟姉妹の子、すなわち、被相続人の甥・姪までに制限されました。
     
  2. 子の代襲相続人となる直系卑属の相続分は、その直系卑属にあたる被代襲者が受けるべきであった相続分と同じです。代襲相続は、被相続人の死亡または相続欠格・廃除による相続権喪失によって、その直系卑属が不利益を受けないようにするための制度です。よって、代襲相続人の相続分は、被代襲者の受けるべきであった相続分と同じであるべきだとされたのです。代襲相続人が一人である場合には、その者は被代襲者の相続分をそのまま承継しますが、代襲者が数人あるときは、その各自の相続分は、被代襲者が受けるべきはずであった部分について、法定相続分(民法900条)の規定にしたがって定められます。
     
  3. たとえば、被相続人甲の相続人には妻A・子B・C・Dがあり、Dは甲より先に死亡しています。Dには妻乙との間に、子E・Fがあります。相続財産は3600万円です。各自の相続分と相続取得額は次の通りです。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×/2=1800万円
    子B・Cの各相続・・・・・3600万円×1/2×1/3=600万円
    孫E・Fの各相続・・・・・3600万円×1/2×1/3×1/2=300万円

     
  4. 兄弟姉妹の代襲相続人となる子の相続分は、その子が代襲相続人となる直系尊属の相続分の定め方に応じて定められます。

    被相続人甲には、妻Aがいるが、Aとの間に子はなく、父母も死亡しています。妻Aの他には相続人としては、兄弟姉妹B・C・Dがいます。しかし、B・Cは甲に先立って死亡しており、Bには嫡出子E・F、嫡出でない子Gがおり、Cには嫡出でない子Hがいます。相続財産は3600万円です。各自の相続分と相続取得額は次の通りです。

    妻Aの相続・・・・・3600万円×3/4=2700万円
    Dの相続・・・・・3600万円×1/4×1/3=300万円
    E・Fの各相続・・・・・3600万円×1/4×1/3×2/5=120万円
    Gの相続・・・・・3600万円×1/4×1/3×1/5=60万円
    Hの相続・・・・・3600万円×1/4×1/4×1/3
    =300万円 

遺言による相続分の指定

  1. 被相続人は、遺留分の規定に反しない限り、遺言で共同相続人の全部または一部の者について、法定相続分の割合と異なった割合での相続分を定めることができます。また、これを定めることを第三者に委託することもできます。これを相続分の指定といい、指定された相続分を指定相続分といいます。この制度が定められた趣旨は、被相続人が、共同相続人の個々の事情を考慮して、具体的に公平な相続分を指定することが、期待されたことにあるとされています。しかし、民法は同様な目的のために、遺産の分割方法の指定、あるいは遺贈という制度も認めており、この三者の守備範囲が明確でないため、解釈上困難な問題が生じています。
     
  2. 相続分の指定の方法としては、被相続人は自ら指定するか、第三者に指定の委託をすることができます。いずれの場合であっても、この相続分の指定または指定の委託は、必ず遺言によらなければなりません。被相続人が、生前に指定することは、弊害をともなうことが少なくありません。また指定あるいは指定の委託が効力を生ずるのは、被相続人の死後であることから、遺言という厳格な方式によって、被相続人の意思を明確にしておく必要があるからです。したがって、遺言以外の生前行為による指定または指定の委託は、たとえ相続人全員が同意しても無効です。第三者に対する指定の委託自体は、遺言書によらなければなりませんが、指定の委託を受けた第三者がする指定行為は、なんらの方式を必要としません。
     
  3. 相続分の指定は、被相続人みずからするのが通常でしょうが、自身ではせずに、遺言で第三者に指定の委託をすることができます。これは、種々の事情によっては、被相続人自身では指定しにくいこともあるし、遺言書作成時には妥当な相続分の指定であっても、その後の事情の変更によっては、その指定が適切でなくなることもあり得ます。そこで、被相続人が信頼する第三者に、相続分の指定を委託することを認めて、遺言書作成後における事情の変更を考慮し、実情に適した相続財産の分配を可能にする制度であると、されています。委託による指定は、不要式の相手方のない単独行為です。必ずしも書面による指定は必要なく、被指定者である相続人の同意も必要としません。
     
  4. 被相続人から相続分の指定を受けうる第三者に、相続人あるいは包括受遺者が、含まれるか否かについては争いがあります。信義則上、相続に利害関係を持たない者でなければならないとして、これらの者は含まれないとする消極説があります。また、特段禁止規定もなく、被相続人の意思を尊重してこれらのものも第三者に含めてよいとする積極説もあります。さらに、自己の相続分を指定しない場合には、これらのものを含めてよいとする折衷説もあります。
     
  5. 指定の委託を受けた第三者は、諾否の自由を有し、委託を承諾すべき義務を負うわけではありません。したがって、第三者が委託を拒絶した場合、あるいは、委託を承諾したにもかかわらず指定しない場合、指定することができない場合が問題ですが、これに関しては特に規定はありません。しかし、委託を拒絶した場合、および承諾はしたが指定することができない場合は、指定の委託は効力を失い、法定相続分の適用を受けると解すべきでしょう。また、指定の委託を承諾するか否か確答せず、また承諾はしたが指定をしない場合は、相続人などの利害関係人は、指定の委託を受けた第三者に、相当の期間を定めて催告し、その期間に諾否の確答がなく、あるいは指定をしない場合も、同様に法定相続分の適用があると解する説が有力です。

相続分指定の態様

  1. 相続分とは、相続人が相続財産を承継すべき割合をいうのであるから、本来、相続分の指定は、相続財産の何分の何というように、相続財産全体に対する分数的割合で示されるべきです。しかし、不動産、動産、株式などのように、相続財産の種類を指定することも可能です。また、特定の相続財産を指定しても、それが相続財産全体に対する相続すべき割合を支持している限り差し支えないと解されています。
     
  2. したがって、特定の相続財産を、特定の相続人に与える趣旨の遺言がなされた場合、それが、相続分の指定、遺産の分割方法の指定、遺贈のいずれにあたるかという困難な問題が生じます。当該相続人に与えられた財産が、同相続人の法定相続分を上回っている場合には、そのいずれであっても結論に違いはありません。しかし、法定相続分より少ない場合には、後二者であれば、同相続人はさらに他の相続財産を取得する余地があるのに対し、相続分の指定であれば、その余地がないことになって違いが生じます。
     
  3. そのいずれであるかは、結局遺言の解釈の問題に帰着し、遺言の文言、具体的内容などを検討して、決すべきことになります。もっとも、相続分の指定と解すると、それが法定相続分を下回っていた場合に、他の相続財産を取得する余地がなくなることを考慮すると、相続分の指定と会することには慎重であるべきでしょう。
     
  4. 「特定の相続財産を特定の相続人に与える」という内容の遺言は、特別の事情のない限り、遺産分割方法の指定とみるべきで、特に、その特定の相続財産の価額が当該相続人の法定相続分を超えるときは、相続分の指定を含む遺産分割方法指定とみるべきであるとの考え方が、有力であるとされています。
     
  5. 被相続人が、相続人全員の相続分を指定したが、それらの相続分の指定を合計したものが、遺産全体に対して不足または超過する場合がありえます。その場合であっても、その相続分の指定を無効として法定相続分によると解すべきでなく、各指定相続分を比例的に修正して、各共同相続人の真正の相続分を算定すべきでしょう。これは、遺言解釈のひとつの場面であって、遺言をできるだけ有効として解釈すべきであるとする考え方に基づくものです。
     
  6. たとえば、被相続人甲の相続人は、ABCであるが、その相続分はAが2分の一、Bが4分の一、Cが5分の一と指定された場合、指定相続分の合計は、20分の19となって不足しています。この場合の修正相続分は、次のようになります。

    Aの相続分は、1/2にABC全体分を乗じて10/19となります。
    Bの相続分は、1/4にABC全体分を乗じて5/19となります。
    Cの相続分は、1/5にABC全体分を乗じて4/19となります。

     
  7. 同じく被相続人甲の相続人は、ABCであるが、その相続分はAが2分の一、Bが3分の一、Cが4分の一と指定された場合、指定相続分の合計は、12分の13となって超過しています。この場合の修正相続分は、次のようになります。

    Aの相続分は、1/2にABC全体を乗じて6/13となります。
    Bの相続分は、1/3にABC全体を乗じて4/13となります。
    Cの相続分は、1/4にABC全体を乗じて3/13となります。

     
  8. 被相続人が、相続人全員に相続分の指定をしたが、その指定を受けた者の一部が、相続放棄をした場合に、相続人の相続分はどうなるのでしょうか。たとえば、被相続人甲の相続人は、ABCであるが、Aが2分の一、Bが4分の一、Cが4分の一と指定された場合に置いて、Cが相続放棄をすると、A・Bの相続分はどうなるのでしょうか。
     
  9. 相続人が相続放棄をすると、当該相続人は、初めから相続人とならなかったものとみなされるから、相続人でない者に対する相続分の指定は、ないことになります。したがって、相続放棄をした被指定者に対する相続分の指定のみが無効となると解すべきです。この場合、指定全部が無効となり、法定相続分によるべきであると解する見解もあります。しかし、遺言はできるだけ有効として解釈すべきであるから、前述の指定相続分についての不完全な指定の場合と同様に考えるべきでしょう。修正された相続分は次のようになります。

    Aの相続分は、1/2にAB全体を乗じて2/3となります。
    Bの相続分は、1/4にAB全体を乗じて1/3となります。

相続分の一部指定

  1. 被相続人は、相続人全員につきもれなく相続分を指定することができるが、一部の相続人についてだけ相続分を指定することもできます。この場合には、相続分の指定を受けなかった他の相続人の相続分は、法定相続分の規定にしたがって定められます。また、相続分の指定を委託された第三者が、一部の相続人についてだけ指定をした場合も同様です。
     
  2. 具体的な算出方法を検討してみましょう。
    たとえば、相続人はABCの三人の子のみである場合、被相続人がAに3分の一、Bに4分の一を指定したときは、Cの相続分は、残りの12分の五となります。
     
  3. 同じ事例で、被相続人が、Aに2分の一の相続分を指定したときは、BとCの相続分の合計は残り2分の一です。これを、BとCの法定相続分の割合で分けることになり、BとCの相続分は各4分の一となります。
     
  4. 相続人の一部に対して、相続財産全部に関しての相続分の指定があるため、残余の相続人に相続分がない場合があります。これは、被相続人が、故意に特定の相続人を相続から排斥するために、指定から外した場合が考えられます。また被相続人が特定の相続人の存在を忘れてその相続分の指定を没却した場合とか、すべての相続人の相続分の指定後に新たに相続資格を取得した相続人が出現した場合、などに生じます。
    これは遺言解釈の一場面であり、できるだけ遺言を有効であると解釈すべきであって、かかる相続分の指定は有効です。一部の学説に、かような相続分の指定は無効であって、法定相続分によると解するのもありますが、やはり有効と解するべきでしょう。
     
  5. 一部指定と包括受遺者の関係があります。
    包括受遺者については、相続人と同一の権利義務を有するとしているから、包括受遺者の取得すべき相続財産の割合についても、民法第902条第二項の適用があるとされています。したがって、包括遺贈において、受遺者の取得すべき財産の割合が指定され、本来の相続人の相続分が指定されていない場合、反対に、本来の相続人の相続分が指定され、包括受遺者の取得すべき財産の割合が指定されていない場合には、配偶者以外の相続人が一人追加されたものとして処理すれば足りるとする見解が有力です。
     
  6. 次に相続分指定の効果を検討します。
    相続分の指定は、被相続人自身が定めたときは、遺言の効力発生のときから効力が生じます。第三者に委託したときは、遺言が効力を生じた後、第三者が指定することにより、相続開始のときに訴求して効力を生じ、各共同相続人の相続分が定まることになります。
     
  7. 被相続人または指定の委託を受けた第三者による相続分の指定は、遺留分に関する規定に違反することはできません。ここでいう「遺留分に関する規定に違反することができない」との意味については、争いがあります。遺留分を侵害する指定全部が当然無効となる説、遺留分を侵害する限度で相続分の指定が無効になるとする一部無効説がありました。しかし、現在の学説の通説は、遺留分権利者の減殺請求に服せしめられるに過ぎないとしています。
     
  8. 相続分の指定がなされていても、共同相続人中に特別受益を受けた者がいる場合には、その特別受益者の具体的相続分は、民法第903条によって算定されます。しかし、被相続人は、この特別受益のもち戻しを免除する意思を表示することによって、その適用を排除することができます。特別受益にあたる生前贈与があるにもかかわらず、被相続人が、これにあえて言及せずに相続分の指定をしたときは、被相続人の死亡時に存在する相続財産をその割合で共同相続人に取得させようとする意思を有しているとして、特別受益のもち戻しを免除する意思があると解すべきことが、少なくないと思われます。

相続分指定の効果

  1. 相続分の指定があった場合、相続債務にどのように影響するでしょうか、という問題があります。相続財産にマイナスの財産(債務)が含まれている場合があります。この場合に、相続分の指定がなされれば、そのマイナスの財産は、指定相続分の割合で継承されることになります。けれども、相続債権者との関係で問題です。すなわち、共同相続人が指定相続分の割合を、外部に対して主張できるか否か問題なのです。指定相続分を重視して、法定相続分は相続分の指定がない場合の補充的な定めとみる考えからすれば、相続の債権者も、相続分指定にしたがわざるをえないと解する余地があります。
     
  2. しかしこのような立場だと、債務者である共同相続人の立場によって、債務を継承する割合を認めることになって、相続債権者は不利益を受ける可能性があります。したがって共同相続人は、相続の債権者に対しては、共同相続人が受ける法定相続分によって債務を負担していると考えるべきでないでしょうか。学説も被相続人の考えによって、相続債務の負担を変えるにはやはり相続債権者の同意が必要だと解し、相続債権者の同意がない限り相続分の指定をしても、相続債権者に対してはその旨を主張できないと解しています。
     
  3. 法律で定めた法定相続分に至らない相続分を指定された相続人が、不動産に対して法定相続分の共同相続登記がなされていることを悪用して、その事情を知らない第三者に譲渡する場合が考えられます。これは、法定相続分を上回る相続分の指定を受けた相続人が、この譲渡を受けた第三者に対して、その指定の相続分を主張するためには、登記が必要か否かの問題です。
     
  4. 事例で考えてみましょう。
    相続人は、ABの二人の子のみとします。被相続人甲は、Aに4分の3、Bに4分の1の相続分の指定をしました。しかし、その登記をしないうちに、Bが法定相続分による2分の1ずつの登記をしました。その法定相続分2分の1を、Bは、第三者乙に譲り渡した場合、AはBの指定された相続分を超えた持分について、A自身が取得したことを登記がないにもかかわらず、乙にその旨を主張できるか否かです。
     
  5. この問題に関しては判例があります(最高裁判所判例 平成5年7月19日)。Bが法定相続分の共同相続登記をしても、指定された相続分を超える部分は権利のない登記です。登記には公信力がありません。その結果、第三者乙は、指定相続分に応じた持分のみを取得します。よってAは乙に対し、甲の指定してきたBの相続分4分の1を超える部分については、登記がなくても乙に対抗することができます。
     
  6. この判例の考えは、法定相続分についての通説・従来の判例の見解と同一理論を採用したものです。相続分の指定を法定相続分を変更する物権変動と解することなく、指定相続分を法定相続分と同一の役割を果たすものと認めたものです。
     
  7. 学説には、登記不要説もあります。しかし、多数説は、相続分の指定は被相続人の意思により法定相続の原則を変更するもので、実質的には一種の処分行為であることを理由に、指定相続分を第三者に対抗するためには対抗要件を必要とするとしています。

特別受益者の相続分

  1. 共同相続人の中には、被相続人から遺贈を受ける者がいます。または、その生前に婚姻、養子縁組、あるいは生計の資本として贈与を受けた者があります。その場合には、相続人間の衡平をはかるために、その価額を遺産分割の際に考慮し、すなわち遺産に算入して相続分が算出されることを規定したのが特別受益者の相続分です。
     
  2. すなわち、これらの遺贈あるいは贈与がある場合は、これらを相続開始時の相続財産に加算して、相続財産とみなします(みなし相続財産)。そして、法定相続分あるいは指定相続分の割合を乗じて、各共同相続人の取得すべき相続分を算出します。それから遺贈あるいは贈与を受けた相続人は、これらの価額を控除して、その者の具体的相続分とします。
     
  3. 具体的相続分は、特別受益のほか、寄与分を考慮して定まりますが、その法的性質をどのように解するかについては、争いがあります。最高裁判所判例平成12年は、具体的相続分そのものを訴訟手続きで確認することができるか否かが争われた事案において、具体的相続分の権利性を否定して、確認の利益なしとしました。
     
  4. 特別受益者とされる者は、共同相続人の内で被相続人から、婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本として贈与を受けた者および遺贈を受けた者です。この共同相続人には、すべての相続人が含まれます。よって、配偶者および子だけでなく直系尊属や兄弟姉妹が相続人となる場合も持ち戻しを余儀なくされることがあります。また、相続人である以上、単純承認をした場合であると限定承認をした場合であるとを問いません。ただし、相続放棄をした者は、当初から相続人でなかったことになるのですから、特別受益者に該当しません。
     
  5. 被代襲者が、被相続人から特別受益を受けていた場合に、代襲相続人が、これを持ち戻さなければならないかにつき、争いがあります。現在の通説的考えは、積極説を採用しているようです。すなわち、持ち戻しは共同相続人間の不均衡を調整する趣旨であり、また代襲相続も衡平の観念にもとづき順位を引き上げる趣旨であることから、代襲相続人は被代襲者が生存していれば受けるべき相続利益以上のものを取得すべきではありません。また、実質的にみても被代襲者に特別受益があるときには、その直系卑属である代襲相続人も、それだけ利益を受けるわけで、被相続人の特別受益額が終局的には代襲相続人に帰属するからには、持ち戻しをなさしめた方が、紛争を解決するのに適します。このような理由で持ち戻しを肯定しています。
     
  6. 代襲相続人が、被相続人から特別利益を受けていた場合はどうでしょうか。代襲原因が発生したのちの受益であれば、持ち戻しの対象となります。しかし、代襲原因発生前の受益については、持ち戻しの対象となるか争いがあります。通説的な考えは、代襲原因発生前の代襲相続人は、相続人ではないことから、代襲原因発生前の受益は、相続財産の前渡しとは言えないとして、持ち戻しを不要としています。しかしながら、特別受益制度は、共同相続人間の衡平の維持が目的であることから、受益者は相続開始当時に共同相続人であれば足り、受益の時期にかかわらず持ち戻しの対象とすべきであるとする学説が有力です。
     
  7. 受贈当時には、推定相続人の地位を有していなかった者が、その後贈与者の配偶者になったり、養子となったような場合に、受贈者は持ち戻し義務があるのでしょうか。これについては、すべて持ち戻しの対象とすべきである説があります。また、その贈与が養子縁組のためとか、贈与と婚姻ないし縁組との間に因果関係がある場合には、持ち戻しを肯定する考えがあります。これは「婚姻、養子縁組のため」の贈与に関する規定を準用した考えです。家庭裁判所の審判例では養子縁組の話が決まったことに、感動して養子となるべき者に学資にあてる趣旨で株式などを贈与した被相続人が、縁組届出前に死亡した事案につき、この場合の贈与は相続財産に加算すべきであるとしました。
     
  8. 被相続人から、相続人の配偶者あるいは子などに対し、贈与がなされている場合も問題です。持ち戻しは、直接の受贈者のみに認められるべきですから、原則として否定されるべきです。もっとも、このような贈与が、相続人に対する贈与と異ならないと認められるような特別の事情がある場合には、当該相続人に持ち戻し義務を認めてよいでしょう。審判例では、相続人がその子を扶養しないため、相続人の父である被相続人がその子(被相続人の孫)の教育費や生活費などを面倒みたという事案で、相続人の特別受益であるとして持ち戻し義務を認めました。
     
  9. 包括受遺者はどうでしょうか。これも争いがありますが、包括受遺者は相続人と同一の権利義務を有するとされていることより、持ち戻し義務があるとする考えが、有力なようです。

特別受益財産の範囲

  1. 遺贈された財産は、その目的を問わずに、すべて特別受益財産として持ち戻しの対象となります。遺贈された財産は、相続開始時には、相続財産のうちに含まれているものですから、贈与された財産のように、それを加算する必要はありません。

  2. 婚姻、養子縁組のための贈与は、特別受益財産の範囲に含まれます。これは、持参金、支度金など、婚姻・養子縁組のために、被相続人から特にしてもらった支度の費用が典型的なものです。結納金、挙式費用が、婚姻、養子縁組のための贈与に含まれるかについては争いがあります。挙式費用については、通常の挙式費用は含まれないとする考えが有力です。この考えのなかには、挙式は婚姻、また養子縁組をする当事者のためというよりも、親の社交上の出費たる性質が強いことを理由とする見解があります。
     
  3. 生計の資本としての贈与も該当します。生計の資本としての贈与とは、子どもが独立する際に、居住用の宅地を贈与するとか、農家の場合には農地を贈与するとかがその典型的なものですが、これらに限られず、広く生計の基礎として役立つような財産上の給付が該当すると解されています。高等教育には、親の扶養義務の範囲に属する義務教育が含まれないことは当然です。また、現在の我が国の教育水準に照らせば、高等学校教育も義務教育の場合に準じて考えることができ、結局大学以上の教育がこれに該当するというべきでしょう。このような高等教育の費用は、被相続人の生前の資産収入や社会的地位からすれば、その程度の教育をするのが普通であるという場合には、学費の支出は親の当然なすべき扶養の範囲内にあるものとして特別受益に該当せず、それを超えた身分不相応な学費のみが特別受益となると解すべきでしょう。審判例では、大学に入学した際の入学資金を特別受益と認めたものがあります。また、学費としての贈与は、被相続人の資産状態、社会的地位に照らし、その扶養義務の範囲内に属すると認められる場合には、生計の資本である特別受益に該当しないとするものもあります。
     
  4. 生命保険金請求権は、被相続人からの生前贈与あるいは遺贈には、条文の分離上該当しません。しかし、通説的な考えは、被相続人が保険料を支払った場合、保険金請求権は保険料の対価である実質を持ち、遺贈ないし死因贈与に準ずべき財産の移転(無償処分)とみられるから、その形式にとらわれずに、遺産分割に際して、共同相続人の衡平をはかるため、持ち戻しの対象にすべきであるとしています。なお、最高裁判所決定平成16年は、養老保険契約にもとづく死亡保険請求権は、被保険者が死亡したときにはじめて発生するものであり、保険契約書の払い込んだ保険料と等価関係に立つものではなく、被保険者の稼働能力に代わる給付でもないのであるから、実質的に保険契約者または被保険者の財産に属していたものと見ることはできません。このように形式的にも実質的にも相続財産性を否定し、そのことから死亡保険金請求権またはこれを行使して取得した死亡保険金は、特別受益財産としての遺贈または贈与に該当する財産にはあたりません。よって、死亡保険金請求権の特別受益性を原則として否定しました。
     
  5. 死亡退職金などの遺族給付が、特別受益財産として持ち戻しの対象となるでしょうか。学説の多くは、死亡退職金などの遺族給付が賃金の後払い的性質を有すること、持ち戻しを否定すると共同相続人間の実質的衡平が著しく害されることなどを理由に、生命保険金請求権と同様に、その特別受益性を肯定しています。裁判例では、特別弔意金につき、遺族の生活保証的性格を有することを理由に、特別受益性を肯定したのがあります。また、退職金、役員功労金につき、いずれも被相続人の生前の労働、貢献に対する対価であり、特に退職金は賃金の後払い的性格を有し、その実質は遺産に類似するわけですから、共同相続人間の公平をはかるために、特別受益財産とみるのが相当であると、したものがあります。

特別受益持戻免除の意思表示

  1. 特別受益財産が持戻されるのは、共同相続人間の衡平をはかるとともに、それが被相続人の通常の意思に合致していると推測されることからです。したがって、被相続人がこれと異なる意思、すなわち持戻し免除の意思を表示したときは、遺留分の規定に反しない限りこれに従うことになります。この持戻し免除の意思表示は、被相続人に対し、特定の相続人に相続分の他に特に利益を与える権限を認めたものであって、共同相続人間の衡平より被相続人の意思を優先させたものです。
     
  2. 持戻し免除の意思表示の方式については、特別の制限はありません。明示であると黙示であると、生前行為によると遺言によるとを問いません。被相続人が、特定の相続人に相続分以外に、財産を相続させる意思を有していたことを推測させる事情がある場合に、黙示の持戻し免除の意思表示が認められます。また、被相続人が特定の相続人に生前に贈与をしたにもかかわらず、この贈与に言及することなく、遺言で相続分を指定した場合には、被相続人は持戻し免除の意思を表示したものとみるべきでしょう。これを認めた審判例として、次のものがあります。被相続人は、生前において、相続人である三男にその相続分をはるかに超える農地その他の不動産を贈与しました。そして、自己の営んできた農業を自己と同居してきた三男に継がせる意思であったこと、日付の記載を書くため自筆遺言証書としては効力のない書面中に、全財産を三男に譲渡する旨の記載があることなどの事情を認定したうえ、このような事情においては、被相続人は当該生前贈与につき持戻し免除の意思を表示していたものと認めました。さらに、別の審判例として、次のものがあります。被相続人がその所有する土地上の同人所有の建物を取り壊して、相続人である長男が家屋を新築する際、当該相続人が被相続人らを同居させ、その面倒をみることが前提とされ、また新築家屋の一部の使用収益を被相続人に委ねる黙示の合意がなされたと推認される場合、長男の土地使用の権限は、一種の負担付使用貸借上の権利にもとづくものですから、これにともなう特別受益については、被相続人は持戻し免除の意思を表示したものと認められるとしたものがあります。
     
  3. 持戻し免除の意思表示が、遺言でなされている場合に、撤回が許されていることは明らかです。しかし、生前行為によって持戻し免除の意思表示を撤回できるかについては、若干疑問ですが、被相続人に遺産の自由処分権が認められていることからすれば、自由になしうると解されています。
     
  4. 持戻し免除の意思表示は、遺留分の規定に反しない範囲内で効力を有します。この規定の解釈に関し、遺留分の規定に反する意思表示は当然に無効であるとする説があります。しかし、通説的考えは、当然無効ではなく、他の相続人に遺留分減殺請求を与えたに留まると解しています。
     
  5. 特別受益財産の持戻しは、共同相続人間の衡平をはかることを目的とする制度であるが、実際には、相続放棄の手続きや遺産分割協議によらずに、共同相続人の一人に遺産を集中させる方便として利用されることが多いようです。すなわち「民法903条により相続分がない旨の証明書」(特別受益証明書・相続分皆無証明書)が作成され、それに基づいて被相続人から共同相続人の一人に対して、相続財産である不動産の移転登記が行われる登記手続きが古くから認められています。この場合の特別受益者については、法定相続分による共同相続登記をしたのちに、改めて除外する更正登記をするための必要がないので、当初から共同相続登記の相続人から除外することが認められているのです。しかも、形式上適法な登記申請があるときは、登記官がたまたまそれが事実に反することを知っていても申請の受領を拒むことはできないとされています。

配偶者の特別受益ほか

  1. 下級審裁判所は、従来から配偶者への贈与・遺贈について黙示の持ち戻しの免除の意思表示の存在を認定することがあったところ、2018年民法改正は特別受益者の相続分(民法第903条)に4項を新設し、とりわけ居住用不動産についてこの趣旨を明文化しました。すなわち、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が他の一方に対し、その居住の用に供する建物またはその敷地について遺贈または贈与をしたときは、当該被相続人はその遺贈または贈与について、持ち戻し免除の意思表示がされたものと推定する、との規定です。
     
  2. 特別受益の評価時期について、判例通説は相続開始時を評価の基準とします。具体的相続分を遺産分割によって取得する財産額そのものではなく、相続開始時に定まる率分と考えることからの帰結です。問題なのは、金銭贈与をどう評価するかです。貨幣における名目主義の関係で問題を生じます。判例は、相続開始時の貨幣価値にしたがって換算評価をするべきと解釈しています。なお、特別受益にあたる贈与の目的物が受贈者の行為によって、滅失したまたはその価額の増減が生じた場合について、相続開始時になお現状のままであるものとみなされます。
     
  3. 特別受益である贈与が一定額を超えると、相続分がマイナスになる相続人が生ずることがあります。この場合、マイナスになった相続人(超過特別受益者)の相続分はゼロに扱われるにとどまり、財産を払い戻すことは要求されません。問題は、残りの共同相続人間でどのように処理されるかです。超過特別受益者を除いたそれぞれの共同相続人の具体的相続分を分子とし、それらの総和を分母として算出される率分を、第903条によって算出される具体的相続分(率)とする見解が有力です。具体例は次のとおりです。
     
  4. 被相続人の相続人は、生存配偶者A、子BおよびCです。相続開始時に被相続人に属していた財産は6000万円相当の不動産甲、2000万円相当の不動産乙、2000万円相当の絵画丙、2000万相当の不動産丁とします。このうち、丙と丁はCに遺贈されています。このとき相続財産とみなされる額は、6000万(甲)+2000万(乙)+2000万(丙)+2000万(丁)=1億2,000万円です。これに各相続人の法定相続分を乗じた額は、A:1億2000万 × 1/2=6,000万、B・C:1億2000万 × 1/2 × 1/2=3,000万、Cへの丙・丁の遺贈は特別受益なので、Cについては丙・丁の評価額を控除します。そうすると、C:3000万 - 2000万(丙) - 2000万(丁)= −1000万となるが、Cが超過分を返還する必要はなく、単に0となります。したがって。A:B:C=6000万:3000万:0万=2:1:0となります。A、Bは、相続財産甲、乙を2:1の割合で分割することになるので、分割時点での遺産の評価が相続開始時の評価と変わらなければ、A、Bが遺産分割によって得る額はA:8000万(甲+乙) × 2/3≒ 5333万、B:8000× 1/3≒ 2666万となります。(なお、Cは遺贈によって別口で絵画丙、不動産丁あわせて4000万相当を被相続人から得ています。)
     
  5. ある財産が、特別受益にあたることの確認の訴えが適法であるか、また具体的相続分の価額またはその割合の確認が適法であるかが争われることがあります。判例はいずれについても不適法であるとしています。
     
  6. 第一相続の相続開始後、遺産分割未了の時点で、第一相続における相続人(A)について、相続開始(第二相続)があった場合、すなわち、いわゆる広義の再転相続の場合には、判例は、第一相続についても特別受益による具体的相続分としてAが取得する財産額を算定したうえで、第二相続における各相続人の具体的相続分を算定するべきだとしています。

寄与分

  1. 共同相続人のなかに、相続財産の維持または増加に寄与した者がある場合に、具体的相続分を操作することによって、その寄与を寄与相続人の相続による取得額に反映させようというのが寄与分の制度であります。これは、特別受益の持ち戻しを、ちょうどひっくり返したような手順を採ります。注意するべきは、寄与分は相続分の調整であって、相続財産に潜り込んでいる他者の財産を確保するために、他者に物件的請求権や不当利得返還請求権を与えるものではない、ということです。寄与分の制度は、それらの権利が認められるほどではない寄与にも相続分の操作によって一定の意義を与えることにあります。
     
  2. 相続分を操作する際に、特別受益の持ち戻しと寄与分の両方が生じる場合があります。この場合、同時適用説、すなわち、持ち戻しの操作と寄与分の操作を同時に行うという見解が有力です。
     
  3. 具体的事例で考えてみましょう。
    被相続人Pの相続人は、生存配偶者A、配偶者との間の子BおよびCがいます。
    相続開始時にPに属していた財産は6,000万円相当の不動産甲、2,000万円相当の不動産乙、2,000万円相当の絵画丙があります。そのほか生計の資本としてCが2,000万円相当の不動産丁の贈与をPから得ています(評価額の算定は、いずれも相続開始時とします)。また、Bには2,000万円分の寄与分が認められるとします。
     
  4. このとき、「相続財産とみなされる」額は、6,000万(甲)+2,000万(乙)+2,000万(丙)+2,000万(丁)ー2,000万(寄与分)=1億円となります。これに各相続人の法廷相続分を乗じた額は、A:1億× 1/2=5,000万、B・C:1億× 1/2×1/2=2,500万となります。
     
  5. Bには2,000万円の寄与分が認められるから、B:2,500万+2,000万=4,500万、Cへの不動産丁の贈与は特別受益なので、Cについては、丁の評価額を控除します。したがって、C:2,500万ー2,000万=500万となります。
    結局、A:B:C=5,000万:4,500万:500万=10:9:1となります。
    A、B、Cは、相続財産甲、乙、丙を10:9:1の割合で分割することになるので、分割時点での財産の評価が相続開始時の評価と変わらなければ、A、B、Cが遺産分割によって得る額は、5,000万、4,500万、500万となります(なお、Cは贈与によって別口で不動産丁・2,000万円相当の、贈与をPから得ています)。
     
  6. 民法に規定する寄与分は、相続人による寄与であることを要します。
    次に、「特別」の寄与であることを要します。寄与の典型は、被相続人の事業への労務の提供または、財産上の給付、被相続人の療養看護でありますが、これらに限られません。寄与によって、被相続人の財産の維持または増加があったことを要するが、その維持または増加は現存していることを要しません。
                     
  7. 寄与分は、相続開始のときの財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることはできず、遺贈は遺留分によって制約されます。他方、寄与分と遺留分の関係は、明示的に規定されていません。
     
  8. 寄与分は、共同相続人間の協議が調わない場合には、家庭裁判所が一切の事情を考慮して定めます。寄与分は、遺産分割における財産の取得割合に直接影響をおよぼし得るので、家事審判で決定することが、実体験について裁判を受ける権利を保証する憲法に違反しないかが問題になります。判例は、寄与分を定める審判は、本質的に非訟事件であるとして、合憲としています。
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