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特別縁故者

越谷 司法書士のオリジナル解説

司法書士・行政書士による相続のオリジナル解説です。
特別縁故者について、嫁の財産取得、遺贈登記、特別縁故者の範囲、特別縁故者の相続財産分与、と分けて解説しています。

相続についてお困りでしたら、越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所へご相談ください。

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長男の嫁と義父

  1. 長男の嫁は、長男が死亡後も婚家に残り、病気になった義父の介護を継続する場合が、少なくありません。
     

  2. このような場合に、義父が死亡した時に、嫁は義父の財産を取得できるのでしょうか。
    なんとかして、少しでもそのに取得させたいものです。

長男の嫁の相続権

  1. 死亡した長男の嫁さんが、義父の相続人となることはありません。
    相続人は、法律で定められており仕方がありません。
     

  2. もっとも、義父が死亡後に、義父の長男である夫が亡くなり、結果的に義父の財産を長男の嫁が取得した場合は、義父の財産を相続したのと同様です。
     

  3. しかし、この場合は、配偶者の財産を相続したのであり、義父の遺産を相続したのではありません。

義父の「財産を与える」との口約束

  1. 病気療養中の義父が、介護をしている亡くなった長男の嫁に、「私が、死んだら全財産を与える」、との口頭の約束をする場合があります。
     

  2. これは、文面でないことより、遺言とはみとめられません。
     

  3. しかし、死因贈与と考えることが出来ます。問題は、その証明ですが、かなり困難かと思います。
     

  4. 有力な証人がいれば、捜し出しましょう。 
     

  5. たとえば、義父と付き合いのあった人が、「長男の嫁に、全財産を残すと言っていた」との証言が得られれば、O.Kです。
     

  6. やはり、義父の生存中に、遺言書を作成してもらうことが最善です。
     

  7. しかしながら、遺言書を作成しても、相続人の入れ知恵で第二の遺言書を作成し、撤回されることも考えられます。
     

  8. 確実に、義父の遺産を取得するには、「養子縁組」をする以外にないでしょう。 

義父の特別縁故者

  1. 相続人がいない場合、相続財産を取得できる場合があります。
     
  2. それは、特別縁故者に該当する場合に、相続財産の分与を受ける制度です。 
     
  3. 特別縁故者に対する相続財産の分与は、法律上は相続人ではないが、実際上被相続人と深い縁故がある者に、遺産を分与する制度です。
     
  4. 特別縁故者の範囲は、法定されています。
    (1) 被相続人と生計を同じくしていた者
    (2) 被相続人の療養看護に努めた者
    (3) その他被相続人と特別の縁故があった者、が該当します。
     
  5. 亡くなった長男の嫁が、被相続人である義父と、同居して生活を共にしていた場合、病気の義父を看護していた場合などは、該当するでしょう。
     
  6. 長男の嫁が、「特別縁故者」であると信じ、相続財産の分与を希望する場合は、
    (1) 相続人捜索の公告期間の満了後3ヶ月以内に
    (2) 被相続人の住所地又は相続開始地の家庭裁判所に
    (3) 被相続人との特別の縁故関係を明らかにして相続財産処分を申立てます。
     
  7. この申立てをしなかった長男の嫁には、相続財産の分与は認められません。

総説

  1. 不動産を取得した場合は、民法177条より登記が必要です。
     

  2. 死因贈与あるいは遺贈で、義父の不動産を取得した場合、登記を早くしてください。
     

  3. なぜなら、義父の相続人が、「不動産を相続した」として、第三者に、その不動産を売却して移転登記をした場合、その者が不動産を取得するからです。

登記申請書例

  1. 同居していた、義父甲野太郎の土地・建物を遺贈された、亡長男の嫁・甲野花子の登記申請書は、次のようになります。
     

  2. なお、遺言執行者はなく、相続人は、隣町に住む甲野次郎です。

総説

  1. 特別縁故者に対する相続財産の分与は、民法第958条の3に規定されています。
    1962年の民法改正で、新設された条項です。

     

  2. 当時の相続法は、民法旧規定(戦前)と異なり、相続人の範囲も、比較的狭くなり、遺言もあまり利用されていませんでした。
     

  3. そのため、相続人が存在しない場合、相続財産は全て国庫に帰属していました。
     

  4. しかし、国庫に帰属させるよりも、被相続人と何らかの縁故関係にある者に、取得させるほうが望ましいことです。
     

  5. このような観点から、特別縁故者への相続財産分与の制度が規定されました。

法定の特別縁故者の範囲

  1. 民法の規定は、 三者を定めています。
     

  2. 第一に、被相続人と、生計を同じくしていた者です。
    第二に、被相続人の、療養看護に努めた者です。
    第三に、その他、被相続人と特別の縁故があった者です。

被相続人と生計を同じくしていた者

  1. これは、被相続人と家計を同じくして生活していた者のことです。
     
  2. たとえば、内縁の配偶者、事実上の養親子、子供の妻が該当します。しかし、必ずしも、親族である必要はありません。
     
  3. 判例は、次のように、全くの他人にも認めています。
    「甲は、失業対策事業の、日雇人夫仲間である被相続人と、12年にわたり生活をともにし、かつ同人の病気の際に、療養看護に努めた者で、特別縁故者に該当する」

被相続人の療養看護に努めた者

  1. これは、被相続人に対し献身的に、療養看護に尽くした者をいいます。
     
  2. 同居していた者が、看護するのが通常ですから、前述の、生計を同じくしていた者にも該当することが多くあります。
     
  3. 民生委員、職場の元同僚、元従業員が該当することもあります。
     
  4. 付添婦や看護師のように対価を得ている者は、どうでしょうか。原則として、特別縁故者には当たらないとされています。
     
  5. しかし、「対価としての報酬以上に、被相続人の看護に尽力した看護婦は該当する」と、した裁判例があります。

その他、被相続人と特別の縁故があった者

  1. 前述に、準ずる程度に密接な縁故関係がある者です。 
     
  2. 親族あるいは近隣者として、通常の交際をしていただけの者は、不該当です。
     
  3. 親族者で、被相続人の生前に生活上の支援をしていた場合は、該当例が多いようです。
     
  4. 他人でも、次のように認められた例があります。 
    (1) 被相続人と50年間親交があり、相談相手として、また経済的にも助け合い、最後は死に水までとった、被相続人の元教え子。 
    (2) 被相続人のために、家屋を購入してやり、かつ10年以上も被相続人一家の生活
    を援助した、被相続人の元雇い主。
     
  5. 法人などの団体も、特別縁故者として認められた事例があります。 
    (1) 被相続人が、生前40年近く経営者・代表者として発展に努め、私財を投じて財政
    的基盤を固めてきた、学校法人。 
    (2) 方式不備のため無効な遺言であるが、被相続人が、長年居住してきた市に対し、
    遺産を同市の老人福祉事業に充ててほしいと意図していた場合の、寝屋川市。 
    (3) 被相続人が生活し、そこで死亡した養老院、養護老人ホーム。

総説

  1. 特別縁故者に対する相続財産の分与は、法定されています。
    民法第958条の3に、規定されています。

     

  2. 一定の者の請求があった場合に、家庭裁判所が審判で、相続財産を分与するか否かを判断します。

分与の相当性

  1. 相続財産の分与は、家庭裁判所が、分与を相当と認める場合になされます。
     

  2. 相当性の判断基準は、一切の事情を総合的に調査・判断して、決定されます。
    すなわち、縁故関係の内容、程度、年齢、職業、残存している相続財産の種類および数額などが、調査・判断されます。

     

  3. 数人の特別縁故者がある場合、誰にどの財産を、どの程度分与するかも、前記2の判断基準に照らして、裁判所の裁量で決まります。
     

  4. 実際は、全部分与されることが多いのですが、裁判所の裁量で一部分与の場合もあります。

相続財産分与の対象財産

  1. 特別縁故者に対して分与されるのは、「清算後残存すべき相続財産」です。
     
  2. 裁判上、問題となったものに「共有持分」があります。
     
  3. 民法第255条は、共有者の一人が相続人なくして死亡したときは、その持分は他の共有者に帰属する、と規定しています。
     
  4. そこで、共有持分が特別縁故者への分与の対象となるか、が問題です。
    いわば、255条と958条の3の、いずれが優先的に適用されるかです。
     
  5. 最高裁判所は、958条の3を優先適用しました。
    すなわち、共有持分は、分与の対象となり、分与がなされないときにはじめて255条
    により、他の共有者に帰属することを明らかにしました。

相続財産分与の手続き

  1. 申立権を有するのは、特別縁故関係を主張する者です。
     

  2. 自己への分与を、求めることを要します。
    第三者へ分与することを、求めることは認められません。

     

  3. 家庭裁判所が、職権で分与をすることはできません。
     

  4. 特別縁故者が、分与の請求申立てをしないで死亡した場合、相続人はその地位を承継できません。
     

  5. 特別縁故者の地位は、被相続人との個別的なものであるからです。

    また、分与申立てをするかは一身専属的地位であることも、理由の一つです。
     
  6. 特別縁故者が、分与申立て後に死亡の場合は、相続されるとされています。
    一種の期待権となるからです。

     

  7. 相続開始地の家庭裁判所が、管轄権を有するのが原則です。
     

  8. 申立期間は、相続人捜索の公告期間の満了後三ヶ月以内です。

残余財産の国家への帰属

  1. 特別縁故者からの分与申立てがなく、または、分与が一部にとどまり、残余財産がある場合には、それらの相続財産は国家に帰属します。
     
  2. その場合、相続財産管理人は、遅滞なく管理計算をして、相続財産を国家に引きつがなければなりません。
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2024年4月1日より、相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年、また遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。義務に違反すると10万円以下の過料の対象となります。できるだけ早めに手続きをするのが推奨されます。

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