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相続開始の原因は、死亡以外にもありますか。戸主の隠居で相続は開始しますか

相続開始原因は、死亡のみです。

戸主の隠居のような、生前相続は認められません。

相続開始の効果は、いつ生じますか

相続開始の効果は、被相続人の死亡と同時に生じます。

相続人が、被相続人の死亡を知らなかった場合は、知った時ですか

いいえ。相続人が、被相続人の死亡の事実を知ったかどうかは、関係ありません。
また、戸籍上の死亡の届出をしたかどうかに、かかわりません。

相続開始時期は、具体的には、いつですか。

認定死亡とか、失踪宣告の場合など各種あると思うのですが

相続開始時期は、具体的には次のように解されています。

  1. 一般死亡の場合は、戸籍簿記載の死亡の年月日時分です。
  2. 認定死亡の場合は、戸籍簿に、認定死亡の記載がされた日です。
  3. 失踪宣告で、普通失踪は、失踪期間の満了時です。
  4. 失踪宣告で、危難失踪は、危難の去った時です。

相続開始の場所はどこですか。東京在住の者が海外で死亡した場合はどうなりますか

相続は、被相続人の最後の住所地において開始します。

これは、相続事件の裁判管轄の決定基準となります。
したがって、東京在住の者が、海外で死亡しても、東京の住所地となります。 

法人は相続人になりますか

わが国の民法は、法人が相続人となることを認めていません。

胎児は相続人になりますか。また胎児が死産児の場合はどうなりますか

胎児の相続は、すでに生まれたものとみなされますので相続人となります。

胎児が死産児の場合は、相続しません。

胎児のために相続登記など遺産分割ができますか

胎児を相続人とする、相続登記はできます。

胎児の保護となるからです。
しかし、遺産分割協議はできません。
これは、必ずしも胎児の保護とはなりませんので、認められません。

相続人が予め「相続人の指定」をすることが認められますか

いいえ、認められません。

民法は、法定相続制を、採用しています。
すなわち、相続人は、法律上画一的に定められています。
これを、法定相続人といいます。

法定相続人は、どのような者が該当しますか

大きく分けて、2系列に分かれます。

  1. まず、「血族相続人」が、あります。
    被相続人と、血縁関係があることで、相続権が与えられます。

     
  2. 次に、「配偶者相続人」が、あります。
    被相続人の配偶者に、相続権が与えられるのです。

血族相続人の相続順位はどうなっていますか

血族相続人は、次の順位で相続人となります。

  • 第1順位 子
  • 第2順位 直系尊属
  • 第3順位 兄弟姉妹

第1~3順位は、先順位者が、たくさん相続するということですか

いいえ。先順位者が相続人となれば、後順位者は相続人となれません

血族相続人と、配偶者相続人との順位は、どうなりますか

配偶者は、常に相続人です。

血族相続人がいるときは、その者と、同順位です。

血族相続人の、「第1順位 子」には、養子をふくみますか。

肯定の場合、実子と養子の割合は、どうなりますか。
既に「子」がいる場合、胎児の相続分は、どうなりますか

「子」は、実子・養子を問いません。

そして、実子・養子は、同一割合で相続します。

既に「子」がいる場合、胎児の相続分は、その子と同一割合の相続です。

血族相続人の、「第2順位 直系尊属」を、説明してください

直系尊属とは、被相続人の、父母・祖父母のことです。

父母は、実父母であるか養父母であるかを問いません。

よって、実父母・養父母の全員生存なら、直系尊属は4名となります。
直系は、血族に限りますから、配偶者の尊属をふくみません。
つまり、旦那が亡くなった場合、嫁の父母は相続人ではありません。
祖父母は、父母が相続人でない場合に、相続人となります。

直系尊属が相続人となるのは、「子」がいない場合のみですね

いいえ。第1順位の「子」がいない場合、又はその全員が相続放棄をした場合、あるいは、相続資格を失った(相続欠格・廃除)場合が、あります。

「第3順位 兄弟姉妹」は代襲相続人をふくみますか

はい。兄弟姉妹の子、つまり被相続人の甥・姪をふくみます。

相続欠格とはなんですか

相続欠格とは、法律上当然に相続資格がなくなることです。

相続人なのに、なぜ相続欠格として、相続資格がなくなるのですか

法感情に反するからです。

相続人となるべき者が、一定の重大な違法行為をした場合、この者を相続人とすることが、法感情に反するからです。

相続欠格に該当する場合は、法律で規定されていますか

はい。相続欠格に該当する相続欠格事由は、民法で規定されています。

民法で規定されている以外にも、相続欠格となることはありますか

いいえ。民法で規定された以外には、相続欠格とはなりません。

相続欠格は、法律上当然に相続資格を奪うものですから、法律の規定は、厳格に解釈され、適用されるのです。

相続欠格事由はなんですか

民法の定める相続欠格事由は、5つあります。

大きく分ければ、次の2つです。

  • 第一に、被相続人などに対する生命侵害に関するもの
  • 第二に、被相続人の遺言の妨害に関するもの

と、なります。

被相続人などに対する生命侵害に関するもの、とはなんですか

2つあります。

まず、「故意に、被相続人または相続について先順位・同順位にある者を死亡させたり、死亡させようとしたために、刑に処せられた者」です。

次に、「被相続人の殺害されたことを知って、告発とか告訴しなかった者」です。

「故意に、被相続人または相続について先順位・同順位にある者を死亡させたり、死亡させようとしたために、刑に処せられた者」を詳しく教えてください

被相続人または相続について先順位・同順位にある者に対して、殺人既遂・殺人未遂・殺人予備を犯し、これによって刑に処せられた者は、相続欠格人となることです。

過失とか、傷害で死亡させた場合は、該当しないのですか

はい。過失致死罪とか、傷害致死罪の場合には、相続欠格とはなりません。

「被相続人の殺害されたことを知って、告発とか告訴しなかった者」を教えてください

被相続人が殺害されたことを知れば、告訴・告発するのが相続人の義務ですから、
これを怠った者には、ペナルティとして相続欠格としたのです。

被相続人の殺害を知って、告訴とか告発を怠れば、例外なく、相続欠格となるのですか

いいえ、告訴・告発のできない者とか、できにくい者は、相続欠格とはなりま せん。

是非の弁別ができない者とか、殺害者の配偶者および直系血族は、告訴・告発をしなくても、相続欠格とはなりません。

相続欠格事由には、「被相続人の遺言の妨害に関するもの」が、あるとのことですが、その妨害事由に、詐欺の場合がありますか

はい。詐欺・強迫によって、被相続人の、相続に関する、遺言の作成・撤回・取消し・変更を妨げた者は、相続欠格人です。 

これは、被相続人の相続に関する、遺言の自由を侵害する重大な違法行為だからです。

詐欺・強迫の場合はそれだけですか

いいえ。詐欺・強迫により、被相続人に相続に関する遺言をさせ、または撤回・取消し・変更をさせた者も、相続欠格人とされています。

これは、被相続人の遺言の自由を侵害する重大な違法行為だからです。

被相続人の遺言の妨害に関して、相続欠格はそれだけですか

もう1つあります。相続に関する被相続人の遺言書を、偽造・変造・破棄・隠匿した者も、相続欠格人とされています。

これは、被相続人の、相続に関する遺言を、不明にする重大な違法行為だからです。

遺言書は、相続に関する遺言書でなければならないのですね。認知に関する遺言書は、いかがですか

そのとおり、遺言書は、相続に関する遺言書です。

被相続人が、嫡出でない子を認知する旨の遺言書も、相続に関する遺言書であり、これを隠匿した者は、相続欠格者であり、相続人となれません。

認知する旨の遺言書も、認知によって、認知された子が相続人となるために、相続に関する遺言書に該当するからです。

相続に関する被相続人の遺言書を、破棄・隠匿した者が、相続欠格人とされるには、破棄・隠匿の故意が必要でしょうね。

その他に、相続に関して不当な利益を得る動機あるいは目的が必要でしょうか

はい。最高裁判所の判例では、遺言書を、破棄・隠匿する故意のほかに、相続に関して不当な利益を得る動機あるいは目的が必要である、とされました。

相続欠格者は、相続資格を失いますが、何らかの手続きが必要でしょうか

いいえ。法律上当然に、相続する権利がなくなります。

相続欠格者になった者が哀れなので、被相続人が、家庭裁判所に対し取消しを請求しようと思います。可能ですね

いいえ。出来ません。相続欠格は、被相続人の、意思に基づいて相続資格を、奪うものではないからです。

相続欠格者になると、全ての被相続人からの、相続資格を失うのですね

いいえ。相続欠格事由と関係する、特定の被相続人に対する相続資格を失うだけです。 

たとえば、甲が、自分の子供乙を、殺害し刑に処せられたとします。
甲は、乙を被相続人とする相続については、相続資格を失います。
しかし、甲の、父親丙を被相続人とする相続については、相続資格があります。

相続人の廃除とはなんですか

相続人の相続資格を奪う制度です。

相続人の廃除とは、被相続人の意思によって、相続人の相続資格を奪う制度です。

なぜ相続人の廃除の制度があるのですか

相続人の廃除の制度は、被相続人の意思を尊重して、認められたのです。

すなわち、被相続人が、推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者)に、相続させたくない場合に、かつ、そのことが当然である場合に、被相続人の意思によって、相続資格を奪うのです。
詐欺・強迫により、被相続人に相続に関する遺言をさせ、または撤回・取消し・変更をさせた者も、相続欠格人とされています。
これは、被相続人の遺言の自由を侵害する重大な違法行為だからです。

相続欠格と相続人の廃除の違いはなんですか

相続欠格は 、法律上当然に相続資格を奪うものです。

相続人の廃除は、被相続人の意思に基づき一定の手続きで廃除されない限り、相続資格は奪われません。

被相続人を虐待した者でも、当然には相続資格を奪われないのですか

はい。被相続人から廃除されない限り、相続人となることができます。

相続欠格の対象となる者は、すべての推定相続人ですが、相続人の廃除も同様ですね

いいえ。相続人の廃除の対象は、遺留分を有する推定相続人のみです。

それでは、遺留分を有しない兄弟姉妹は、廃除の対象とならないのですか

はい。そのとおりです。

それでは、被相続人の兄弟姉妹が、被相続人に虐待を加えた場合でも、相続人資格を奪えず、相続人の廃除の趣旨に反するのではありませんか

いいえ。そういうことはありません。

それはなぜですか

遺留分を有しない推定相続人、すなわち兄弟姉妹に、相続財産を与えたくないと考えた場合には、次の方法があります。

  1. 遺言で、これらの者に対する相続分を零とする。
  2. 全財産を、第三者に贈与したり遺贈する。 

これらの方法で、兄弟姉妹に相続させずにすみ、相続人の廃除と同様の効果となります。

相続人の廃除の事由は、どのようなものですか

相続人の廃除事由は、次のとおりです。

遺留分を有する推定相続人が、

  1. 被相続人に対して、虐待をしたとき。
  2. 被相続人に対して、重大な侮辱を加えたとき。
  3. 推定相続人に、その他の著しい非行があったとき。

以上の、3つです。

そのような相続人の廃除事由の有無は、被相続人が決定するのですか

いいえ。
相続権を剥奪するに足る廃除事由の有無は、虐待・侮辱・非行の程度、当事者の社会的地位、家庭の状況、教育程度、被相続人側の責任の有無、その他一切の事情を斟酌して、家庭裁判所が決定いたします。

「虐待」について、相続人の廃除が認められる場合を教えてください

具体的な裁判例を、ご紹介しましょう。いずれも、戦前のものです。

老齢の被相続人の腕にかみついて負傷させ、さらに突きとばした行為を、虐待と認めたのがあります。
 
また、親をいつも、「馬鹿親爺」と罵倒し、えり首をつかんで引きずりまわし、病気をしても介抱しない子の行為は、虐待および侮辱にあたるとされました。

戦後の判例で、「虐待」について、相続人の廃除を認めたのはありますか

はい。相続人が、経済的に苦痛のない身分にありながら、住家の裏小屋に老齢かつ病気の両親を住まわせ、生活費を全く与えず、食べ物を要求する母親を押し倒し、全治5ヶ月の傷害を与え、さらに、「お前達は、首をくくって死ね」と、暴言をはいた行為は、虐待または著しい非行である、とされました。

「侮辱」について、相続人の廃除が認められる場合を、教えてください

はい。戦前の判例ですが、ご紹介しましょう。 

  1. 被相続人である養父を、告訴した行為。
  2. 財産争いから父子が、仇敵の間柄に発展し、子が草刈鎌で父を殴打傷害した行為。
  3. 親子の財産争いから、子が新聞に誹謗記事を投書し、「狂父」よばわりした行為。 

これらはいずれも、「侮辱」として、相続人の廃除を認めました。

「著しい非行」について、相続人の廃除が認められた裁判例がありましたら、教えてください

いくつかご紹介しましょう。

  1. 婚姻前から数名の女性と関係し、3人の子供を生ませ、結婚後も、妻子および老齢の父母を捨て、他の女性と同棲した行為。
     
  2. 家庭の主婦が、夫や子を捨て、父や夫の復帰の勧告にしたがわず、妻子のある男と、同棲した行為。
     
  3. 大学に入学したが、ギャンブルと女遊びで中退し、親に無心をくりかえし、就職するからと言っては金を強要し、結婚すると言っては資金を出させた行為。 

いずれも、「著しい非行」として、相続人の廃除が認められました。

それでは、相続人の廃除が認められなかった裁判例がありましたら教えてください

  1. 被相続人に対する言動(虐待・侮辱)が、一時の激情にかられたもので、将来反復のおそれがない場合。
     
  2. 遊蕩三昧にふけり、財産を濫費する被相続人たる父に対し、準禁治産宣告の申立をしても、それが被相続人の放埓な生活態度を反省させる為にしたものと認められる場合。 

いずれも、相続人の廃除を認めませんでした。

相続人の廃除は、いつ、どのようにするのですか

相続人の廃除は、生前廃除と遺言廃除の2通りがあります。

  1. 生前廃除は、被相続人が自ら家庭裁判所に、廃除の請求をします。
    そして、相続人の廃除の調停の成立又は審判の確定により、効力が生じます。
    なお、被相続人の推定相続人である子供や配偶者は廃除の請求ができません。
    相続人の廃除の請求は、被相続人のみができる一身専属権です。

  2. 遺言廃除は、遺言で相続人の廃除をします。
    相続開始後、遺言執行者が、遅滞なく家庭裁判所に、廃除の請求をします。

    そして、相続人の廃除の、調停の成立又は審判の確定により、効力が生じます。

相続人の廃除の効果は、調停の成立又は審判の確定により、直ちに発生するのですか

調停の成立又は審判の確定が、相続の開始前か、開始後かによって異なります。

  1. 相続の開始前に、調停の成立又は審判の確定があったときは、即時に効果が、発生します。
     
  2. 相続の開始後に、調停の成立又は審判の確定があったときは、相続開始の時に遡って、発生します。

相続人の廃除をされた者は、すべての者に対しての相続権を失うのですね。

すなわち、誰からも相続できなくなるのですね

いいえ。この効果は相対的(対人的)であって、廃除者たる被相続人に対してのみ相続権を奪われるだけです。
よって、他の者に対する相続権は失いません。

相続人の廃除は、取消しができますか

はい。被相続人は、いつでも、特別の理由を要せず、相続人の廃除の取消しを家庭裁判所に請求することができます。
被相続人は、遺言でこの取消しの請求をすることもできます。

相続人の廃除の取消しは、調停とか審判が必要ですか

はい。調停の場合は、調停が成立し調書に記載されることによって、相続人の廃除の取消しの効力を生じます。

審判の場合は、審判がなされ、確定することによって、取消しの効力を生じます。

相続人の廃除の取消し請求は、廃除された者もできますか

いいえ。相続人の廃除の取消し請求は、被相続人のみが、することができるのであって、廃除された者から、取消し請求はできません。

特別受益者とは、どういう人のことですか

特別受益者とは、被相続人から生前贈与や遺贈を受けた者をいいます。
民法第903条が、「特別受益者の相続分」を規定しています。

被相続人から、贈与や遺贈を受けた者がある場合、これらの事実を考慮しないで、相続分を計算すると、特別受益者は、二重の利得をします。

これでは、相続人間で不公平な結果となります。
また、被相続人の意思に反するとも考えられます。
 
そこで、民法は、このような場合の具体的相続分の算定を定めたのです。

特別受益となるのは、どのようなものですか

特別受益の範囲は、次のものが規定されています。

  • 第一に、相続人が、被相続人から受けた遺贈です。
  • 第二に、相続人が、被相続人から生前に、婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本として受けた贈与です。

第二の生前贈与は、すべての贈与ではないのですか

はい、婚姻・養子縁組のため、もしくは生計の資本として受けた贈与に限定です。

これらの贈与は、たとえば、相続開始前1年間にしたものに、限定されるとかされるのでしょうか

いいえ。相続開始前1年間にしたものに限定されるとかの、規定はありません。

共同相続人の1人が、受取人とされた死亡保険金は、相続財産ですか

いいえ。これは相続財産に入りません。
最高裁判所の判決では、特別の事情がある場合は別ですが、原則として特別受益に当たらないとしました。

特別受益としての生前贈与について、価額評価が問題となると思いますが、受贈時を基準とするのですか

いいえ、相続開始の時が基準となります。

それでは、贈与されたお金を全部使い切り、相続開始時になくなっていれば、特別受益とならないのですね

いいえ、相続開始時に、原状のままであるものとみなして、評価します。

すなわち、受贈者の行為によって、贈与の目的である財産が滅失し、またはその価格の増減があったときでも、相続開始の時において、なお原状のままであるものとみなして、評価されるのです(民法第904条)。

家屋をもらって建増しをした場合でも、建増しをしないままで存在するものとして仮定して評価するのですね

そのとおりです。

特別受益の価額が、相続分の価額を超える場合もありえますね。

この場合、その超えた部分を他の相続人に償還するのですか

いいえ、超過した分は、返さなくてもよいです。

被相続人が贈与分をその者の特別取り分とすると、遺言に書いた場合はどうなりますか

この場合は、被相続人の意思を尊重して、それに従います。

たとえば、遺産は、その者を含めて法定相続分に従って分配すると、遺言に書かれていれば、持戻しは免除されます。

「相続分の譲渡」とはなんですか

「相続分の譲渡」とは、各共同相続人が、遺産(相続財産)全体に対して有する包括的な持分、あるいは法律上の地位を、第三者に譲渡することです。

遺産中の乗用車を譲渡することも該当しますか

いいえ。ここでいう相続分とは、積極財産のみならず 消極財産を含めた包括的な相続財産全体に対しての持分、あるいは法律上の地位です。個々の財産の譲渡を、意味するものではありません。

相続分の譲渡を認めることは、関係のない者が、相続財産に関与する事になり、好ましくないのではありませんか

たしかに、遺産分割の理想的実現にとって、好ましくはないですね。

しかし、相続開始から遺産分割時までに時間がかかる場合があります。
そのため、早急に相続分を換価処分をしたい、という相続人の利益を考慮して、認めたものです。

法律でも認められているのですか

はい。民法905条は、共同相続人の1人が遺産分割前でも、自己の相続分を第三者に譲渡できることを前提に、規定しています。

相続分の譲渡は第三者のみにできるのですか

いいえ。相続分の譲渡は、第三者のみならず、共同相続人に対してもできます。

相続分の譲渡人は、遺産分割を請求できますか

はい。請求できる権利を有しています。

相続分の譲受人を除外して、遺産分割協議をした場合、有効ですか

いいえ、無効です。

相続分の譲渡人は、遺産分割協議に参加できますか

いいえ、参加できません。

相続財産上の権利を失っているからです。相続分の譲渡人は、相続分の譲渡によって、相続財産上の権利を失っているからです。

相続分の譲渡人は、相続債務を免責されますか

いいえ、債権者との関係で、免責されません。
免責を認めると、債権者に不利益を及ぼすからです。

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