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1.民法第939条は、相続放棄の効果として、放棄者は「はじめから相続人とならなかったものとみなす」と定めています。相続開始によって、相続人に不確定ながら生じていた相続の効果は相続放棄によって遡及的に消滅し、放棄者は相続から完全に離脱したことになります。
2.そこで、放棄者は、相続開始のときに、相続人として存在しなかったことになります。たとえば、法定相続の帰属に関して、被相続人甲に、配偶者乙と子A・B・Cがいた場合、乙が相続放棄をしたとします。
3.この場合、配偶者相続人がいないことになり、血族相続人A・B・Cのみに、相続分が帰属することになります。また、Aが放棄した場合は、乙の相続分には変更がなく、血族相続人の相続分が、B・Cのみに帰属します。
4.このような相続放棄による相続分帰属についての考え方は、昭和37年法律第45による本条の改正によって明確化されたものです。
5.昭和37年改正前の旧939条二項において、放棄者の相続分が、他の共同相続人へ各自の相続分に応じて帰属する旨、定められていたことから、放棄者の相続分の帰属に関して議論を生じていました。
6.たとえば、上記の場合、子Aが相続放棄をした場合の相続分の帰属について、見解が分かれていたのです。
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美馬 克康(みま かつやす)
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