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配偶者の居住権

越谷 司法書士のオリジナル解説

司法書士・行政書士による相続のオリジナル解説です。
配偶者の居住権の「配偶者居住権の消滅登記」を解説しています。

相続についてお困りでしたら、越谷の美馬克康司法書士・行政書士事務所へご相談ください。

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配偶者居住権が消滅した場合の登記および申請人

  1. 配偶者居住権は、存続期間の満了または配偶者の死亡によって消滅します。
     
  2. この場合の登記は賃借権の抹消登記に準じます。
    すなわち、居住建物の所有権登記名義人を登記権利者とし、配偶者居住権の登記名義人である配偶者を登記義務者とする、共同申請です。
     
  3. 登記の内容は、配偶者居住権の抹消の登記となります。
     
  4. なお、配偶者の死亡によって配偶者居住権が消滅した場合には、その相続人が、登記義務者の相続人の資格で申請すべきものと解されます。

配偶者居住権の抹消登記の申請情報

  1. 賃借権の抹消の登記に準じたものになると想定されます。すなわち、定期建物賃貸借権が存続期間の満了により消滅した場合や、終身建物賃借権が賃借人の死亡により消滅した場合における抹消の登記に準じるものと想定されます。
     
  2. 登記の目的は、「〇番配偶者居住権抹消」とすべきものと解されます。
     
  3. 登記原因およびその日付は、次のようになると解されます。
    存続期間の満了によって、配偶者居住権が消滅した場合には、「存続期間満了」を登記原因とし、期間満了日の翌日を原因日付とすべきでしょう。
    配偶者の死亡によって配偶者居住権が消滅した場合には、「配偶者居住権者死亡」を登記原因とし、死亡日を原因日付とすべきものと解されます。
     
  4. 添付情報は、登記義務者である配偶者が配偶者居住権の設定の登記の際に通知を受けた登記識別情報を添付すべきでしょう。
    なお、配偶者の死亡によって配偶者居住権が消滅した場合には、義務者側の申請人が配偶者の相続人であることを証する戸籍の全部事項証明書などを添付すべきものと解されます。
     
  5. 登録免許税は、不動産一戸について、金1,000円の定額課税です。

配偶者居住権の譲渡を禁止する理由

  1. 新法第1032条第2項が、配偶者居住権の譲渡を禁止したのはなぜでしょうか。
     
  2. 配偶者居住権は、配偶者自身の居住環境の継続性を保護するためのものであるから、第三者に対する譲渡を認めることは、制度趣旨との関係で必ずしも整合的ではないでしょう。
     
  3. 配偶者居住権は、配偶者の死亡によって消滅する債権であり、継続性の点で不安定であることから、実際に売却することができる場面は、必ずしも多くないと思われます。
     
  4. しかし、譲渡以外の方法による投下資本回収の可能性はあります。すなわち、居住建物の所有者の承諾を得たうえで、第三者に居住建物を賃貸すること等によっても投下資本の回収は可能であると考えられます(賃貸であれば短期間の需要もありえます)。

配偶者居住権の譲渡禁止違反の効果

  1. 居住建物の所有者は、配偶者が譲渡禁止規定に違反して第三者に配偶者居住建物を譲渡したことを理由として、配偶者居住権消滅の意思表示をすることができるか問題です。
     
  2. 新法第1032条は、配偶者居住権を有する配偶者の自己使用収益義務として、次のことを規定しています。
    すなわち、①用法遵守義務・善管注意義務、②配偶者居住権の譲渡禁止、③居住建物の所有者に無断で改築・増築すること、および第三者に使用収益をさせることの禁止です。
     
  3. 前記①または、③に違反した場合には、居住建物の所有者は、意思表示によって、配偶者居住権を消滅させることができます。しかし、②の譲渡禁止に違反したことそれ自体は、消滅請求の事由とはされていません。

使用貸借・賃貸借の規定の準用

  1. 配偶者居住権に関する規律のうち、他の条文が準用されている事項は何でしょうか。
     
  2. 使用貸借に関する規定の準用は、次のようなものがあります。
    ①当事者が配偶者居住権の存続期間を定めたときは、配偶者居住権はその存続期間が満了することによって消滅します。

    ②配偶者居住権は、配偶者の死亡によってその効力を失います。

    ③配偶者居住権の本旨に反する使用によって生じた損害の賠償、および配偶者が支出した費用の償還は、居住建物取得者が返還を受けたときから一年以内に請求しないといけません。損害賠償の請求権については、居住建物取得者が返還を受けたときから一年を経過するまでの緩和、時効は完成しません。
     
  3. 賃貸借に課する規定の準用は、次のようなものがあります。
    ①配偶者が適法に居住建物を第三者に使用収益させたときは、当該第三者は、居住建物取得者と配偶者との間の配偶者居巡検に基づく配偶者の限度の範囲として、居住建物取得者に対して配偶者との間の賃貸借に基づく債務を直接履行する義務を負います。

    ②前記①の規定は、居住建物取得者が配偶者に対して、その権利を行使することを妨げません。

    ③配偶者が適法に居住建物を、第三者に使用収益をさせた場合には、居住建物取得者は、配偶者との合意により、配偶者居住権を消滅させたことをもって、当該第三者に対抗することができません。

    ④ただし、その消滅の当時、、居住建物取得者が配偶者の債務不履行を理由として、意思表示により配偶者居住権を消滅させる権利を有していたときは、この限りではありません。

    ⑤居住建物の全部が、滅失その他の事由によって使用することができなくなった場合には、配偶者居住権はこれによって消滅します。

配偶者居住権の登記に関する事例(1)

  1. 被相続人Xは、単独で所有する甲建物(自宅)について、配偶者Yに配偶者居住権を遺贈したが、甲建物の所有権については何ら遺言をしないまま死亡しました。相続人はYおよび子Zです。
     
  2. Yは、遺贈の効力により、相続の開始と同時に、配偶者居住権を取得し、あわせて共同相続人の一人として居住建物の遺産共有持ち分を取得します。
     
  3. 本事例のような場合には、最終的には、遺産分割の遡及効により配偶者は居住建物の所有権を取得しなかったことによるケースが多いと考えられますが、遺産分割が終了するまでの間に、配偶者が配偶者居住権について登記を備えることができるようにする必要があります。
     
  4. 登記は、「相続」を原因とする、XからYおよびZへの所有権移転登記を経由してから、Yのための配偶者居住権の設定登記をすべきです。
     
  5. 配偶者の申請手続きへの関与の仕方は、どうなるでしょうか。
    この場合、配偶者Yは登記権利者としてでなく、Zと共に登記義務者としても関与すべきものと解されます。

配偶者居住権の登記に関する事例(2)

  1. 被相続人Xは、単独で所有する甲建物(自宅)について、配偶者Yに配偶者居住権を遺贈する旨の遺言を作成した後、子Zに甲建物の所有権の一部を生前贈与し、その旨の登記をしました。その後Xは他の遺言を作成しないまま死亡しました。
     
  2. 被相続人が、相続開始のときに居住建物を配偶者以外の者と共有していたことは、配偶者居住権の発生障害事由となります。
     
  3. 本事例では、XがZに対して、甲建物の所有権の一部を生前贈与したことにより、この発生障害事由に該当することになります。
     
  4. また、当該生前贈与は、遺言と抵触する遺言後の生前処分にあたり、これによってXは、遺言を撤回したものとみなされます。
     
  5. したがって、本事例では、配偶者居住権の発生を妨げる事由が、二重に存在することになります。
     
  6. 結局、甲建物について、Xが相続開始当時、所有していた共有持分は、法定相続によってYおよびZに承継されることになるから、「相続」を原因とするYおよびZへのX持分全部移転登記のみをすべきでしょう。
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2024年4月1日より、相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年、また遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。義務に違反すると10万円以下の過料の対象となります。できるだけ早めに手続きをするのが推奨されます。

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