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配偶者の居住権

越谷 司法書士のオリジナル解説

司法書士・行政書士による相続のオリジナル解説です。
配偶者の居住権の「配偶者居住権の取得」を解説しています。

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遺贈による配偶者居住権の取得と特別受益

  1. 配偶者が遺贈により配偶者居住権を取得した場合に、特別受益との関係で注意すべき点があります。
     

  2. それは、婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人が、他の一方に対して配偶者居住権を遺贈した場合には、特別受益の持ち戻し免除の意思表示を推定する規定が、準用されていることです。
     

  3. 持ち戻し免除の意思表示の推定も、配偶者居住権と同じく、高齢配偶者の居住の権利を保護するための制度であることに基づく準用です。

審判による配偶者居住権の取得

  1. 家庭裁判所が審判により、配偶者に配偶者居住権を取得させることができるのは、どのような場合でしょうか。
     
  2. 家庭裁判所の審判による、配偶者居住権の取得の要点は次の通りです。
     
  3. 配偶者居住権の取得の審判をすることができるのは「遺産の分割の請求を受けた家庭裁判所」です。つまり、この審判は、遺産分割手続きの一環として行われるのであって、配偶者居住権の取得のみを家庭裁判所に請求することはできません。
     
  4. 家庭裁判所が、配偶者居住権の取得の審判をするためには、下記のいずれかに該当しなければなりません。
    ① 共同相続人間に、配偶者が配偶者居住権を取得することについて、合意が成立していることです。

    ② 上記①の合意が成立していない場合には、以下のすべての要件を満たしていることが必要です。
    ア 配偶者が家庭裁判所に対して、配偶者居住権の取得を希望する旨を、申し出ていること。
    イ 居住建物の所有者の受ける不利益の程度を考慮しても、なお配偶者の生活を維持するために、特に必要があると認められること。

共有建物と配偶者居住権

  1. 相続開始時に、居住建物が被相続人の単独所有に属していなかった場合、配偶者居住権は成立するのでしょうか。
     
  2. 新法は、共有建物について配偶者居住権の成立を除外する事由を「被相続人が相続開始のときに居住建物を配偶者以外の者と共有していた場合」に限る、としています。
     
  3. そして、それ以外の場合には、混同の例外として、配偶者居住権の成立を認めることを明らかにしています。具体的には、相続開始前から、配偶者が居住建物について共有持分を有していた場合や、配偶者が相続により居住建物の遺産共有持分を取得した場合です。
     
  4. 配偶者が居住建物の共有持分を有している場合には、新法は配偶者居住権の成立を認めることとしました。
     
  5. それでは、配偶者以外の者が共有持分を有していた場合は、どうでしょうか。
     
  6. 配偶者居住権は、配偶者が居住建物を物理的に占有して、居住のように供することを可能とするためのものであります。よって、共有持分のような観念的なものについて、配偶者居住権を成立させることは相当ではありません。
     
  7. したがって、被相続人と第三者が建物を共有していた事例で、配偶者居住権を成立させるとすれば、第三者についても配偶者居住権の債務者として扱わなければならないこととなります。
     
  8. その際、その第三者が同意した場合には配偶者居住権の成立を認めることも考えられないではありませんが、配偶者居住権は、被相続人が居住建物について有していた権利の一部を独立の権利ととらえて相続によって承継させようとするものであり、第三者の同意によって生じた権利を、同質のものと扱うことはできません。

配偶者居住権が配偶者の相続分に及ぼす影響

  1. 配偶者居住権の成立は、配偶者の相続分にどのような影響を及ぼすか問題になります。
     
  2. 特別受益の持ちだし免除の推定規定が準用されない場合には、配偶者は、居住建物以外の遺産からは、自己の具体的相続分から、配偶者居住権の財産評価額を控除した残額について、財産を取得することになります。
     
  3. 配偶者が、配偶者居住権を取得しても、他の相続人の具体的相続分は変わらないことになります。
     
  4. 例外として、特別受益の持ち出し免除の推定規定が準用される場合があります。
    すなわち、配偶者は、自己の具体的相続分から配偶者居住権の財産評価額を控除することなく、居住建物以外の遺産からも財産を取得することになり、その分だけ他の相続人の具体的相続分は減少することになります。

配偶者居住権の設定登記と登記の連続性

  1. 配偶者居住権が成立した場合に、必要となる登記およびその順序はどうなるでしょうか。
     
  2. 配偶者居住権の成立は、相続が開始したことおよび配偶者以外の者が建物の所有者となったことを前提としています。
     
  3. したがって、配偶者居住権の設定登記の申請が受理されるためには、その登記に先行して、当該建物の登記記録の甲区において、「相続」「遺贈」などを原因とする、配偶者以外への所有権移転登記が行われる必要があります。
     
  4. その登記を経たうえで、配偶者居住権の設定登記が、所有権以外の権利に関する登記として、登記記録の乙区で登記されます。
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2024年4月1日より、相続登記の申請が義務化されました。相続によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年、また遺産分割が成立した日から3年以内に相続登記をしなければなりません。義務に違反すると10万円以下の過料の対象となります。できるだけ早めに手続きをするのが推奨されます。

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