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事実上の相続放棄

1.相続人が、正規の相続放棄手続きを行わない「事実上の相続放棄」は、相続債務が存在した場合には、相続人は債権者との関係では、責任追及を免れないという問題があります。

2.事実上の相続放棄は、共同相続人中の特定の相続人の利益を図るために、他の相続人によって行われます。とくに、相続財産に含まれる不動産の相続に基づく単独登記(所有権移転登記)手続きの実現のために、利用されます。

3.事実上の相続放棄には、種々の方法があります。
第一の方法は、特別受益制度(民法第903条)を利用し、特別受益者が「相続分に超過する財産の贈与を受け、その相続分のない事実を証明する」旨の証明書を、作成する方法です。

4.この証明者は、「相続分不存在証明書」,「相続分皆無証明書」,「特別受益証明書」などといいます。これを作成し、他の相続人が、不動産登記の際に、これに印鑑証明書を添付して単独相続登記を行うのです。

5.第二の方法は、遺産分割協議を利用して、共同相続人中のある者が、自己の取得分をゼロとする遺産分割に、合意する場合です。

6.第三の方法は、相続分の譲渡を行うことで、譲渡人が、相続財産全体に対する包括的持分としての相続分を、失う場合です。

7.第二・第三の方法は、事実上の相続放棄者には、一応相続分があることを前提にしたうえで、相続人の権利処分の自由に基づいており、無効・取消原因のない限りは、有効とされています。

8.しかし、第一の方法に関しては、事実に反して相続分がない旨の証明書が、作成されるため、後日の紛争の種を残すことになり、適切な処理ではないとの批判があります。

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