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相続の放棄 ⑧

1.家庭裁判所への相続放棄の申述の際、動機を明らかにする必要はなく、また、相手方のな       い単独行為であるから、動機が表示されて要素の錯誤に当たるとされるのは、どのような       場合かが問題となります。

2.判例は、相続放棄にも錯誤に関する民法第95条の適用を認めるが、共同相続人の1人に       単独相続させるために相続放棄を行った者が、他の相続人も相続放棄をすると誤認してい       た事案で、「錯誤は、単なる縁由に関するものにすぎない」として、錯誤無効を認めませ       んでした(最高裁判例昭和40年)。     

3.その後、下級審では、相続放棄の結果誰が法律上の相続人となるかは、相続放棄者にとっ       て本質的に重要なものであり、この点に関する錯誤があった場合について、次のように判       示しました。

4.相続放棄の動機が「少なくとも相続放棄の手続において表示され、受理裁判所はもとよ           り、当該相続放棄の結果、反射的に影響を受ける利害関係者にも知りうべき客観的な状況       が作出されている場合においては、表示された動機にかかる錯誤」と、なります。

5.そして、民法第95条の適用を認めました。ただし、相続放棄者の相続放棄の無効の主張       は、権利の濫用に当たるとしています(東京高裁判例昭和63年)。   

6.なお、他の相続人から、事実に反し被相続人に多額の債務があると告げられて、相続放棄       を行った事例で、動機の錯誤による相続放棄の無効が認められた事案があります(高松高       裁判例平成2年)。                        

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