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1.なお、前回の「事実上の相続放棄②」に記載した、第一の方法に関しての裁判例にも、証明書の記載内容が虚偽であるときは、これにより相続人が相続分を失うことはない、とするものがあります(第一の方法は、特別受益制度(民法第903条)を利用し、特別受益者が「相続分に超過する財産の贈与を受け、その相続分のない事実を証明する」旨の証明書を、作成する方法)。
2.他方、同じく「事実上の相続放棄②」に、記載した第二の方法と第三の方法との区別がしがたい場合も、多々あります。第一の方法について、本人の真意に基づいて証明書が作成されている場合は、遺産分割協議の成立、共有持分権の贈与、持分権の譲渡・放棄があったものとする裁判例も多くみられます(第二の方法は、遺産分割協議で、自己の取得分をゼロとする方法、第三の方法は、相続分の譲渡を行う方法)。
3.学説にも、第一の方法が本人の真意に基づく場合は、第二の方法と同様に、取得分をゼロとする遺産分割協議が成立した、とする見解が多数です。
4.しかし、特定の不動産の単独相続登記を実現するために、便宜的に第一の方法が利用されるときに、これによって相続分全部を失うとすることには、慎重であるべきと解すべきです。
5.判例をご紹介いたします。
①「相続放棄の性質は、私法上の財産法上の法律行為であるから、これにつき民法第95条の適用がある」(最判昭和40年)
②「甲の、相続放棄の申述により、乙の相続税が、予期に反して多額に上がったことは無効原因とされない」(最判昭和30年)
③「他の相続人甲の放棄を期待して、放棄したところ、甲が放棄を取り下げた場合は、無効原因とされない」(最判昭和40年)
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美馬 克康(みま かつやす)
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