相続法条文・判例概説 (相続開始原因/場所) <越谷・草加・春日部>

 

 総説

 

  

 1 相続とは、自然人の死亡により、その者の財産上の権利義務を、死者と一定の身分

  関係にある者が、法律上当然に包括的に承継することです。

 

 2 財産上の権利義務を、承継される死者を、被相続人といいます。

   そして、承継する者を、相続人といいます。

 

 3 民法は、「第五編 相続」として、第882条から第1044条を、規定しています。

 

 4 その条文と、重要判例を、個別にご紹介いたします。

   それでは、第882条から、始めます。

 

 

 相続開始の原因 (民法第882条)

 

 

 一 相続は、死亡によって開始します。


 1  相続原因は、死亡に限られます。

 

 2 失踪宣告は、一定の時点で失踪者を、「死亡したものとみなす」(民法第31条)ことより、

  失踪者につき、相続が開始します。

 

 3 認定死亡 (戸籍法第89条) を受けた者についても、相続が開始します。

 

 二  相続の開始の意義

 

 1 相続が開始するとは、被相続人の死亡によって、被相続人の権利義務が、相続人に

  移転することです。

 

 2 移転するのは、被相続人に帰属していた権利義務のうち、一身専属権および祭祀財産

  を除いたものです。

 

 3 死亡という事実に基づいて、法律上当然に、移転します。

 

 4 相続人が、具体的に自己のために相続が開始したことを、知っていると否とを問いません。

 

 三 推定相続人の権利について (最高裁判所判例昭和30年)

 

 1 推定相続人は、将来の相続開始の際、被相続人の権利義務を、包括的に承継すべき

  期待権を有するだけです。

 

 2 現在においては、いまだ当然には、被相続人の個々の財産にたいし、権利を有するもの

  ではありません。

 

 

 相続開始の場所 (民法第883条)

 

 

 1 相続は、被相続人の最後の住所地において、開始します。

 

 2 被相続人が、どこで死亡したか、相続財産がどこにあるかは、無関係です。

 

 3 このことは、相続事件の裁判管轄を、決定する基準となります。 

   もっとも、民事訴訟法や家事審判規則は、この点について、詳細な規定を置いています。

 

 

   次の項目、ご説明いたします。

 

   ・ 相続回復請求権・判例概説 → □

   ・ 相続人の廃除・判例概説 → □    

   ・ 相続の一般的効力 → □

     

 

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 相続回復請求権・判例概説 (司法書士・行政書士/越谷・草加・春日部)

 

 相続回復請求権 (民法第884条)の意義

 

 

 1 相続回復請求権は、相続権(相続開始後の相続権)の侵害に対する救済として、認め

  られる真正相続人の権利です。

 

 2 相続人でない者が、相続財産を占有している場合に、真の相続人が、一定期間内に、

  相続回復請求権を行使することで、相続人としての地位を回復できるのです。

 

 

 行使

 

 

 一 個々の財産への請求(大審院判例明治44年)

 

  1 真正相続人が相続した、A家屋には、第三者が居住していました。

 

  2 そこで、真正相続人は、A家屋の居住者に、自己の所有権取得を理由に、明け渡し

   請求をしました。

 

  3 このように、相続による所有権取得を理由として、個々の財産に対し、取戻しを請求

   するのも、相続回復の請求です。

 

 二 包括的行使(大審院判例大正8年)

 

  1 真正相続人が相続した、農地・山林・宅地・家屋を、相続欠格者が、あたかも相続人

   のように占有していました。

 

  2 この場合、相続回復請求権は、包括的に行使できます。

 

  3 よって、真正相続人は、目的たる財産を、いちいち列挙する必要はありません。

 

 

 援用権者

 

 

 一 共同相続人の事例( 最高裁判所判例昭和53年)

 

  1 共同相続人の一人Aが、相続財産のうち自己の相続分を超える部分をも、占有管理

   していました。

 

  2 Aは、他の相続人B・Cに対しては、被相続人から全てを相続したからAの相続分だと

   主張して、真正相続人B・Cの相続権を侵害しています。

 

  3 このような共同相続の場合も、本条の適用はあります。

 

  4 しかし、侵害者Aが、悪意であり、または、そう信じるにつき合理的理由がない場合は、

   別途の考察が必要です。

 

  5 すなわち、侵害されている他の共同相続人B・Cからの、侵害の排除の請求に対して、

   相続回復請求権の時効を、援用できません。

 

 二 侵害していた共同相続人からの譲渡(最高裁判所判例平成7年)

 

  1 共同相続人の一人が、土地について、単独相続の登記をしました。

 

  2 この者は、本来の持分を超える部分が、他の共同相続人に属することを、知ってい

   たか、または単独相続をしたと信じるにつき、合理的事由がありませんでした。

 

  3 この場合に、侵害されている他の共同相続人からの、侵害の排除の請求に対して、

   相続回復請求権の時効を、援用できません。

 

  4 そして、その侵害していた者から、土地を譲り受けた第三者も、消滅時効を援用で

   きません。

 

 三 立証責任(最高裁判所判例平成11年)

 

  1 相続回復請求権の消滅時効を、援用しようとする者は、次のことを主張立証しなけ

   ればなりません。

 

  2 すなわち、真正共同相続人の相続権を侵害している共同相続人が、相続権侵害の

   開始時点において、他に共同相続人がいることを知らず、かつ、これを知らなかった

   ことに合理的事由があったこと、です。

 

 

 取得時効との関係

 

 

 一 相続回復しうる間は、僭称相続人は、相続財産である不動産を占有しても、時効取得

  することは、できません(大審院判例昭和7年)。

 

 二 表見相続人から、相続不動産を転得した第三者は、前者の占有をあわせて主張でき、

  時効取得ができます(大審院判例昭和13年)。

 

 

 20年の期間

  (最高裁判所判例昭和23年)

 

 

 1 相続回復請求権は、相続開始の時から、20年で消滅します。

 

 2 この20年の期間は、相続権侵害の事実の有無にかかわらず、相続開始の時から、

  進行します。

 

 

 

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 相続人の廃除・判例概説

 

 相続人の廃除(民法第892条)の意義

 

 

 1 相続人の廃除は、被相続人の意思によって、遺留分を有する推定相続人の、相続

  権を奪う制度です。

 

 2 相続人の廃除は、相続欠格の場合と異なり、法律上当然に、相続資格を奪うもので

  はなく、被相続人の意思に基づき、一定の手続きで廃除されない限り、相続資格は奪

  われません。

 

 

 遺留分を有する推定相続人

 

 

 1 推定相続人が、遺留分を放棄しているときには、この者を、廃除する必要はありませ

  ん(東京高等裁判所決定昭和38年)。

 

 2 相続人の配偶者に、廃除事由があっても、相続欠格により相続人でない場合は、廃除

  は問題とはなりません(東京家庭裁判所審判昭和50年)。 

 

 

 被相続人に対する虐待・重大な侮辱

 

 

 一 虐待・侮辱の程度(東京高等裁判所決定平成4年)

 

  1 被相続人に対し、精神的苦痛を与え、または名誉棄損する行為でも、全てが該当

   するものではありません。

 

  2 それにより、被相続人と当該相続人との、家族的協同生活関係が破壊され、その

   修復を、著しく困難ならしめる程度が、必要です。

 

 二 虐待の事例(東京家庭裁判所八王子支部審判昭和63年)

 

  1 推定相続人である子Yが、被相続人X所有地上に、三階建てビルを建てたいと、言

   い出しました。

 

  2 これに対し、Xは、Yの日頃の生活態度から、反対しました。

 

  3 すると、Yは、Xに、魔法瓶や醤油瓶を投げつけたり、玄関のガラスを割りました。

    さらに、Yは、灯油をまいて放火すると、脅しました。

 

  4 そこで、Xら家族は、やむなく親族経営の旅館へ、避難しました。

 

  5 Yの行為は、Xに対して、虐待に該当するので、廃除が肯定されました。

 

 三 重大な侮辱の事例(東京高等裁判所決定平成4年)

 

  1 被相続人A再婚頃から、Aと、折り合いの悪い長男Bが、非協調的・敵対的な態度

   を、とっていました。  

  

  2 Aの、再婚相手が死亡後も、Bは、Aの近所に住みながら、一人暮らしのAの面倒も

   みません。

 

  3 その上、Aの再婚相手の、死亡に伴う遺産分割をめぐって対立し、「早く死ね。80迄

   生きたので十分だ」などと、罵倒します。

 

  4 裁判所は、Bの行為を、重大な侮辱によるとして、廃除を認めました。

 

 

 著しい非行

 

 

 一 遺棄の事例(横浜家庭裁判所審判昭和55年)

 

  1 Aは、被相続人夫婦と縁組するとともに、その二女と婚姻しました。

    そして、被相続人から、居宅、賃貸用家屋の贈与を受ける等、援助を受けました。

 

  2 しかしながら、被相続人が重病になっても、何ら療養看護をしません。

    その上、他女と出奔し、所在不明となりました。

 

  3 Aの行為は、妻子を遺棄し、被相続人に重大な精神的苦痛を与えるもので、著しい

   非行であり、廃除事由にあたると、されました。

 

 二 親泣かせの行為

 

  1 大学進学後生活がすさみ、学業を放棄し、些細なことで家族に当たり散らし、暴れ

   まわり、金員を強要し、正業につかず、金銭浪費を重ねる態度は、親泣かせの著し

   い非行であり、廃除理由に該当します(東京家庭裁判所審判昭和42年)。

 

  2 浪費、遊興、犯罪行為、女性問題を繰り返し、被相続人である親に、多大の迷惑を

   かける行為は、著しい非行であり、廃除とされました(徳島家庭裁判所審判昭和43年)。

 

 三  家族的、相続的協同関係を破壊する行為

 

  1 賭博を繰り返して多額の借財を作り、これを被相続人に支払わせ、愛人と同棲して妻

   子をかえりみない行為は、著しい非行です(青森家庭裁判所八戸支部審判昭和63年)。

 

  2 金品等の持出しを繰り返し、意見しようとする被相続人に対して、暴力をふるい、家出

   して所在不明となり、被相続人に、サラ金業者の借金返済をさせる行為は、著しい非行

   であり、廃除に該当します(岡山家庭裁判所審判平成2年)。

 

 

 効果

 

 

 1 廃除された者は、相続財産を取得しません。

   したがって、被廃除者の債権者が、被廃除者の相続持分につき代位登記し、これを

  差し押さえても、この差押登記は無効です(東京高等裁判所昭和60年)。

 

 2 廃除された者が、相続不動産を所時していても、その不動産を遺贈された者は、登記

  をしなくても、被廃除者や、その者の債権者に、自己の不動産であることを主張できます

  (大阪高等裁判所判例昭和59年)。

 

 

 手続き

 

 

 1 廃除は、被相続人が、自己の住所地の家庭裁判所に申し立てます。

   家庭裁判所は、被相続人の申立てに基づき、後見的立場から具体的に、廃除事由

  が存在するか否かを、審査判断します(最高裁判所決定昭和55年)。

 

 2 すなわち、被相続人の宥恕、相続人の改心など、諸般の事情を総合的に考察して、

  廃除が相当であるか否かを、判断するものです(最高裁判所決定昭和59年)。

 

 

 

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 相続の一般的効力

 

 総説

 

 

 1 相続は、死亡によって開始します。

 

 2 相続の一般的効力を、民法第896条は、つぎのとおり規定しています。

   「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継

  する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。」

 

  3 以下、民法第896条に関連した著名な判例を、ご紹介いたします。

 

 

 被相続人が即死の場合

 

 

 1 被害者が、即死の場合は、被害者に、損害賠償請求権は発生しません。

   即死により、権利義務の主体者でないことより、損害賠償請求権を取得しないのです。

 

 2 したがって、相続人は、損害賠償請求権を、相続することはありません。

 

 3 しかしながら、相続人は、加害者への損害賠償請求権を、取得します。

 

 4 それは、被害者の死亡により、相続人に原始的に発生するのです。

   (大審院判例昭和3年)

 

 

 遺骨の所有権

 

 

 1 被相続人の遺骨は、遺産相続人が、所有権を取得します。

 

 2 したがって、被相続人の遺骨を所持している第三者に対して、遺産相続人は、所有権

  に基づき返還請求権を、行使できます。

  (大審院判例大正10年)

 

 

 家屋賃借権の承継

 

 

 1 家屋を賃借していた者が、死亡しました。

   引き続き居住しているのは、賃借人と同居していた事実上の養子です。

 

 2 賃貸人は、事実上の養子にたいして、「あなたに貸したのではないから、家屋から出

  て行け」と、主張します。

 

 3 しかし、賃借人の相続人は、その養子を遺産の事実上の承継者と認め、祖先の祭祀

  も、同人に行わせていました。

 

 4 これらの事情のあるときは、養子は、賃貸人にたいして居住権を主張できます。

   相続人の相続した賃借権を、援用できるのです。

   (最高裁判所判例昭和37年)

 

 

 保険金受取人

 

 

 一 保険金受取人を、「相続人」と、指定した場合@

  1 養老保険契約で、被保険者死亡の場合の保険金受取人が、相続人と指定されて

   いました。

 

  2 この場合は、特別の事情のない限り、被保険者死亡の当時相続人たるべき個人を

   指定した、「他人のための保険契約」と、解するのが相当です。

 

  3 したがって、当該保険金請求権は、保険契約の効力発生と同時に、相続人の固有

   財産となります。被保険者の遺産ではありません。

   (最高裁判所判例昭和40年)

 

 二 保険金受取人を、「相続人」と、指定した場合A

  1 死亡保険金の受取人を、相続人と定め、被保険者が死亡しました。

 

  2 この場合、各相続人が受け取るべき権利は、相続分の割合によります。

    (最高裁判所判例平成6年)

 

 三 保険金受取人の指定のない場合

  1 傷害保険の被保険者が、死亡しました。

    保険金の受取人欄には、指定がありませんでした。

 

  2 保険約款には、保険金を、被保険者の相続人に支払う旨を、定めています。

 

  3 この場合は、特段の事情のない限り、被保険者の相続人を、保険金受取人に指定し

   た場合と同様に、解すべきです。

   (最高裁判所判例昭和48年)

 

 

 死亡退職金ほか

 

 

 一 死亡退職金の受給金は、相続財産に属しません。

   受給権者である遺族は、自己固有の権利として取得します。

   (最高裁判所判例昭和55年)

 

 二 生活保護法に基づく保護受給権は、被保護者個人に与えられた一身専属の権利で

  あって、相続の対象とはなりません。

  (最高裁判所判例昭和42年)

 

 三 公営住宅の入居者が、死亡した場合、その相続人は、その使用権を当然に承継する

  ものではありません。

  (最高裁判所判例平成2年)

 

 

 

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