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相続入門は、相続についてはじめて触れる方向けの解説です。相続の開始から効力等、相続のことを知る最初のステップです。

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  1. 相続は、死亡によって開始します。
    死亡は、かつては心臓停止によるものと捉えられていたようです。しかし、現在では、「脳死」を死亡と解する考えが多いようです。
     
  2. 失踪宣告は、一定の時点で失踪者を「死亡したものとみなす」ことより、失踪者に相続が開始します。
    認定死亡を受けた者についても相続が開始します。
     
  3. 相続が開始するとは、亡くなった人の一身専属権および祭祀財産を除いたものが、死亡という事実に基づいて法律上当然に、相続人に移転することを言います。この場合、相続人が、具体的に自己のために相続が開始したことを知っていると否とを問いません。
     
  4. 相続は、亡くなった人つまり被相続人の住所において開始します。
     
  5. 相続財産に関する費用は、その財産の中から支払います。すなわち、相続開始後、遺産分割までの間に生じた相続財産に関する費用は、相続財産の中から支払われるということです。
     
  6. 相続財産の負担となる費用は、典型的には相続財産の管理費用であり、固定資産税、地代・家賃、火災保険料、水道料金、下水道使用料、電気料金などです。また、管理費の他、相続財産の換価、弁済、その他清算に要する費用があげられます。
     
  7. 問題になるのが、葬式費用が「費用」に入るか否かです。判例は分かれています。近親者が葬式費用を分担するのが公平であると考えれば、理論的には筋が通らないようですが、手っ取り早いといえます。最近では、この考えが優勢のように見受けられます。
     
  8. 相続人として、胎児は相続人については、すでに生まれたものとみなされます。相続開始時に胎児として母親のお腹に存在する子を、出生してはいないけれども、相続人として扱うことを明らかにしたものです。ただし、胎児が死体で生まれたとき、すなわち死産の場合には、適用されません。
     
  9. 胎児が、相続について生まれたものと認められるとして、その時期はいつかについては、考えが分かれます。第一の考えは、胎児が生きて生まれてはじめて遡求的に権利能力を認める立場です。第二の考えは、相続の開始と同時に胎児に権利能力を認めるが、死産の場合には遡求的に権利能力が消滅すると考える立場です。
     
  10. なお、父親が胎児の認知をしており、胎児の出生前に、父親について相続が開始する場合が考えられます。この場合も、胎児は非嫡出子として父親に相続権を取得します。
     
  11. 被相続人の子は、相続人となります。被相続人の子である限り、実子(嫡出子、非嫡出子)であると養子(普通養子、特別養子)であるとを問いません。また、出生の順序も問いません。なお、非嫡出父子関係は、認知によって発生することより、任意認知または強制認知がない限り、親子関係は生じません。これに対して、非嫡出母子関係は、原則として分娩という事実によって発生するから、特別の手続きを要せずに親子関係が発生します。
     
  12. 被相続人Aの子Bに代襲原因が生じると、Bの子Cは、Bに代わってAを相続します。
     
  13. 代襲者は、子の子です。配偶者は代襲相続をすることはできません。子の子であっても、被相続人の直系卑属でないときは、同じく代襲相続をすることができません。子の子であって、被相続人の直系卑属ではない事態は、養子縁組前に生まれた養子の子と養親との間に生じます。
     
  14. 代襲者は、被相続人から廃除されておらず、または被相続人との関係で、欠格でないことを要します。そうでないと、被相続人を相続することができないからです。
     
  15. 代襲原因は、3つに限定されています。
    第一に、以前死亡です。すなわち、子が、被相続人より先に死亡するか、被相続人と同時に死亡する場合です。
    第二に、相続欠格に該当し相続権を失った場合です。欠格自由の発生が、相続開始前か開始後かを問いません。
    第三に、相続廃除です。この場合も相続開始後の廃除がありえます。
     
  16. 代襲者に代襲原因が生じると、さらに代襲相続が生じます。たとえば、被相続人Aの子Bを代襲したBの子Cについて代襲原因が生じた場合、Cの子Dが、Cを代襲してAを相続します。
    またDに代襲原因が生じると、Dの子EがDを代襲してAを相続します。繰り返し代襲相続が行われることになります。
  1. 子およびその代襲者がいない場合、第二順位の相続人は、直系尊属です。直系尊属が、全員相続人となるのではなく、親等の近い者だけが相続人となります。父母、祖父母、曾祖父母いずれもが存在しているときは、父母だけが(共同)相続人となります。
     
  2. 祖父母は、父母の双方が死亡しているときにはじめて相続人となります。曾祖父は、父方の祖父母および母方の祖父母全員が死亡していないと相続人とはなりません。被相続人が養子である場合、特別養子でない限り、縁組によって実方親族との血縁関係が存続するが故に、直系尊属には実方の直系尊属と養方の直系尊属が含まれます。
     
  3. 被相続人の兄弟姉妹が、第三順位の血族相続人です。相続分の関係では、両親を共通する兄弟姉妹と親の一方を共通する兄弟姉妹とで、扱いが異なっています。
     
  4. 兄弟姉妹は、遺留分を有せず、したがって相続人廃除の対象とはならない点で、他の相続人と異なっています。兄弟姉妹には、1回だけ代襲相続が認められています。
     
  5. 配偶者は、常に相続人となります。血族相続人が、子・直系尊属・兄弟姉妹を問わず、これらのものと常に同順位で共同相続をします。被相続人が死亡時に、配偶者と離婚していた場合は、配偶者は相続人とならないことは当然です。
     
  6. 配偶者が相続人となりうるためには、婚姻届を出していなければなりません。相続人が、戸籍から推定しうるのでなければ、取引の安全を害するからです。
     
  7. 重婚が取り消された場合において、取り消し判決の確定に先立って重婚者につき、相続が開始しているときは、いずれの配偶者にも相続権が認められます。
     
  8. 子がなく、共に両親が死亡しているAB夫婦が、同一交通事故で死亡した場合、配偶者として相互に相手方を相続することはありません。この場合、Aについてはその兄弟姉妹とその代襲相続人が相続します。また、Bについては、Bの兄弟姉妹とその代襲相続人が、相続します。
     
  9. 戸籍に現れない内縁配偶者には、相続権はありません。問題となるのは、内縁関係が、一方の死亡によって解消する場合です。内縁が、破綻によって解消する場合には、財産分与請求権の類推適用が一般に肯定されています。そこで、財産分与の類推適用によって、死亡解消の生存内縁配偶者を保護するのも一つの方法です。
     
  10. しかし、財産分与は、財産の清算以上の内容をも含んでいると考えると、必ずしも適切ではありません。
     
  11. 最高裁判所は、死亡した内縁配偶者の子から、生存内縁配偶者に対する遺産にかかる家屋の明け渡し請求に対して、共有持分権にもとづく、居住を保証することによって共有理論による解決を施行しました。その後、最高裁判所は、権利内容が異なることを根拠に、内縁関係の死亡解消の際には、財産分与の類推を否定しました。
     
  12. 相続人とならない場合の一つとして、相続欠格があります。相続欠格は、被相続人の意思如何を問わず、法律上当然に相続資格を奪うものです。
     
  13. また、相続人の廃除として、相続資格を認められた者から、相続資格を奪う制度もあります。相続廃除は、相続欠格と異なり、被相続人の意思によって相続資格を剥奪するものです。廃除にあっては、その取り消しという制度があるため、一度廃除されても相続資格を回復する可能性があります。しかし、取り消しという制度が規定されていない相続欠格については、一度欠格事由に該当すると、永久に相続資格を失うことになります。
     
  14. 相続欠格事由は、被相続人の意思を問わないことから、廃除事由に比べると、不法性が一層強いものがあげられています。また、欠格事由に該当して、相続資格を失う者を許して資格を回復させる制度がないことから、相続欠格とすることには、慎重さが求められることになります。なお、ある者が相続欠格を理由に、相続権を有しないとの確認を求める訴訟は、固有必要的共同訴訟と解されています。
  1. 相続欠格として、相続人となることができない者の第一は、被相続人または、先順位もしくは、同順位相続人に対する殺人行為によって、刑に処せられた者です。既遂と未遂とを問いませんが、故意行為であることが必要です。したがって、過失致死は欠格事由とはなりません。
     
  2. 判例には、当該行為に該当しても、違法性ないし責任制がないときには、欠格にならないとするものがあります。刑事責任を前提とする規定上、刑法上の責任追求をすることができない以上、該当しないというべきでしょう。また刑に執行猶予が課され、猶予期間を無事に終了したときも、欠格にはならないとするのが多数の考えです。
     
  3. 第二に、被相続人の殺害を知りながら、告発、告訴をしなかった者が欠格事由に該当します。告発とは、資格を問わず、被相続人の死亡が犯罪によるものと考える者が、犯罪事実を口頭または書面で、検察官または司法警察員に申し出ることをいいます。また、告訴とは、被害者である被相続人の配偶者、直系親族および兄弟姉妹の関係にある者が、犯罪事実を検察官または司法警察員に申し出ることです。
     
  4. もっとも、相続人に是非の弁別がないとき、殺害者が自己の配偶者または直系血族であるときは、告訴告発をしなくても欠格に該当しません。告訴告発を期待することができないからです。
     
  5. 捜査機関が、独自に捜査にかかっているときには、告訴告発をしなくても欠格事由に該当しません。捜査機関が動き出していないときに限って、欠格事由に該当するのが妥当とされています。判例には、捜査機関が動き出して、告訴告発の必要がなくなった後に、犯罪事実を知ったときには、欠格事由に該当しないというものがあります。
     
  6. 第三に、被相続人が、相続に関する遺言をし、これを取り消し、または変更するのを、詐欺または強迫という不正手段によって、妨害した者です。
    この場合、被相続人に錯誤または畏怖を与え、これにもとづいて遺言をし、取り消しまたは変更するのをやめさせる二重の行為を要するほか、詐欺または強迫による妨害行為と、被相続人のやめるという不作為との間に因果関係を要します。
     
  7. 妨害がやんだ後に、被相続人が遺言をし、それを取り消した場合のみならず、詐欺または強迫によって作成された遺言が、後に詐欺または強迫を理由に取り消されたときも、先の妨害による欠格がなくなるものではありません。
    しかし、これら不正行為によって、自己に利益をもたらそうとする意思を必要とする通説によると、利益をもたらす意思がないときには欠格とならないことになります。
     
  8. 第四に、詐欺または強迫によって被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させたものです。詐欺または強迫によって、本来その気のない被相続人に相続に関する遺言をさせ、取り消させ、または変更させることが欠格事由に該当するのです。
     
  9. 第五に、相続に関する被相続人の遺言書を、偽造・変造・破棄し、または隠匿することが、欠格事由に該当します。偽造とは、無権限で被相続人名義の遺言書を作成することです。変造とは、被相続人の遺言書を無権限で加筆修正することです。破棄とは、物理的に無効にすることです。隠匿とは、遺言書を隠すことをいいます。
     
  10. なお、相続人の行為が、相続に関して、不当な利益を目的とするものでないときは、相続欠格者には該当しません。また、遺言書またはその訂正方法が方式を欠くために無効である場合に、相続人がその方式を具備させて、有効な遺言または訂正方法の外形を作出させる行為は、欠格事由に該当するかのようにみえますが、被相続人の意思を実現させるためのものに過ぎないときは、欠格にはなりません。
     
  11. 隠匿について、遺言書の発見を遅らせる故意が認められないときには、欠格事由としての隠匿には該当しないとする判例があります。公正証書遺言の場合には、公証人の手元に原本があるため、事情によっては隠匿が成立しにくいと思われます。
     
  12. 欠格事由に該当すると、なんらの手続きを要せず、当然に相続資格を失うと解されています。欠格事由が、相続開始前に生じたときは、そのときから、相続開始後に生じたときは、相続開始時にさかのぼって、その効力を生じます。
     
  13. 相続欠格による相続資格の喪失は、当該被相続人での関係のみ生じ、他の相続人との関係まではおよびません。
  1. 相続人廃除は、被相続人の意思によって、推定相続人の相続資格を奪う制度です。相続欠格が、被相続人の意思とは無関係に、一定の行為が取り上げられているのと異なります。被相続人の意思によって、相続資格を剥奪するとはいえ、その意思にはある程度の合理性を有する立場から、その意思だけでは足りず家庭裁判所の審判を要するという立場を、民放は明らかにしています。
     
  2. 廃除の対象となりうるのは、遺留分を有する推定相続人です。すなわち、兄弟姉妹を除く相続人が遺留分権利者です。
    推定相続人が、兄弟姉妹であるときは、相続人は、全財産を第三者に遺贈することによって、相続人である兄弟姉妹になんら財産を承継させないことができます。兄弟姉妹は、遺留分を有しない結果、あえて相続人廃除をする必要はないのです。
     
  3. 被相続人廃除事由の第一として、被相続人に対する虐待・重大な侮辱があります。
    虐待や侮辱は、家族的関係を破壊するような言動と解されています。判例では、被相続人に対し精神的苦痛を与え、または名誉毀損する行為であって、それにより被相続人と当該相続人との、家族的共同生活関係が破壊され、その修復を著しく困難ならしめることとされています。
     
  4. 廃除事由の第二として、著しい非行があります。
    被相続人夫婦と縁組するとともに、その次女と婚姻した者が、被相続人から居宅、賃貸用家屋の贈与を受けるなど、生計上の配慮を受けながら、病気に陥った被相続人の療養看護に努めず、他女と不倫をして所在不明になり妻子を遺棄し、被相続人に重大な精神的苦痛を与える場合は、これに該当します。
     
  5. 著しい非行としては、被相続人に対する暴言・暴行が該当します。
    大学進学後、生活が荒み、学業を放棄し、仔細なことで家族にあたり散らし、暴れ回り、脅迫的言葉を吐いて金銭を強要するなど生業につかず、金銭浪費を重ねる態度が該当します。
     
  6. 浪費、遊興、犯罪行為、女性問題を繰り返すなど、いわゆる親泣かせの行為も著しい非行とされています。
    賭博を繰り返して、多額の借財をつくり、これを被相続人に支払わせ、愛人と同棲して妻子をかえりみず、勝手気ままに振る舞う行為なども、該当します。
     
  7. 推定相続人の廃除は、審判の確定またはこれと同一の効果を生ずる調停調書の作成によって、相続資格剥奪の効果が生じます。戸籍届を必要としますが、これはいわゆる報告的届にすぎません。審判確定前に、相続が開始するときは、資格剥奪の効果は相続開始時にまでさかのぼります。
     
  8. 推定相続人の廃除は、遺言によっても行うことができます。被相続人が遺言によって、推定相続人を廃除したときは、遺言の効力が生じた後に、遺言執行者が家庭裁判所にその申し立てをおこないます。遺言による相続人廃除は、相続開始後に審判が下されることより、廃除の効力は相続開始時にまでさかのぼります。
     
  9. 被相続人は、いつでも推定相続人の廃除の取り消しを家庭裁判所に請求することができます。相続人の廃除が被相続人の意思にもとづくものであることより、一度審判または調停によって効果が生じても、被相続人において気が変われば、取り消しを請求することができるのです。特にその理由は必要としません。
     
  10. 取り消しによって、相続資格を回復します。被相続人は、戸籍の届出をしなければなりません。廃除の取り消しが認められると、さらに気が変わっても、同一事実にもとづいて、廃除を請求することはできないと解されています。繰り返しうるとすれば、法律関係が不安定になるし、訴訟経済にも反するからです。
    すでに行われた廃除審判を遺言によって取り消すだけではなく、先の遺言で推定相続人を廃除し、後の遺言でこれを撤回することも、可能です。要するに、廃除の取り消しは、遺言によって行いうることが認められるのです。
  1. 相続の一般的効果として、被相続人の死亡により被相続人に属していた一切の権利義務が、包括的に相続人に承継されます。この効果は、相続人が相続開始の事実を知るか否か、相続放棄などの有無に関わらず、法律上当然に生じます。承継されるものは、財産法上の法的地位も含みます。たとえば、契約申し込みを受けた地位、売主として担保責任を負うべき地位、無権代理人たる地位、善意者・悪意者たる地位、債権者から何年も請求を受けないできた地位なども、含まれます。
     
  2. 包括承継の例外として、一身専属の権利義務があります。すなわち、被相続人の財産に属する権利義務でもその一身に専属する権利義務は、相続されません。一身専属的な関係とは、被相続人個人の人格・身分と密接な関わりを持つため、その移転や他人による行使・履行を認めることが、不可能ないし不適当なものを指すとされています。
     
  3. 一身専属的なものの法定例として、本人または代理人の死亡による代理関係の消滅、贈与者または受贈者の死亡による定期贈与の執行、借主死亡による使用借権の消滅、委任者または受任者の死亡による委任の終了、組合員の死亡による脱退などがあります。
    また、身分法上の関係およびそれを前提とした権利義務、たとえば夫婦間の同居協力の権利義務、親権なども該当します。
     
  4. 被相続人の死亡により生ずる権利であるが、被相続人に属さない権利があります。生命保険金は、生命保険契約において、被相続人を被保険者とし、相続人(たとえば妻や子)を受取人に指定した場合、被保険者の死亡により支払われます。この保険金が相続財産となるか否かは、契約内容により決まり、相続財産となる場合は限られています。
     
  5. 生命保険金契約で、第一に、受取人を相続人中のある特定の者とした場合には、その保険金取得は保険契約にもとづくものであるので、保険金は相続財産ではありません。
    第二に、受取人を「相続人」と指定した場合、判例は、保険金取得は相続によるものではなく、保険契約にもとづくものとしています。
    第三に、被保険者自身を受取人にした場合、考えが分かれます。つまり、生命保険金は相続財産となる説、相続財産とはならず相続人が固有に取得するとの説に分かれます。
    第四に、当初の受取人が死亡し、被相続人が再指定をしない場合、この再指定がないまま被相続人が死亡したときは、受取人の相続人が受け取ります。
     
  6. 不法行為や債務不履行による損害賠償請求権も、相続されます。財産的損害の賠償請求権として、事故などで負傷しその後に死亡した場合があります。負傷により、被害者本人に発生した財産的損害の賠償請求権が、本人の死亡により相続人に承継されます。他方、即死の場合、被害者は死亡により権利主体性を喪失しており、論理的には生命侵害それ自体に対する損害賠償請求権は本人には帰属せず、したがって相続もされないことになります。ところが、そのように解するとすれば、身体侵害よりも重い生命侵害の場合に、損害賠償請求権が認められないという不均衡が生じます。判例は、即死の場合も、観念的には致命傷と死亡との間に間隔があるとして、死亡による賠償請求権が、本人に発生し相続されると解しています。
     
  7. 慰謝料請求権については、古くから議論があります。当初判例は、被害者が慰謝料請求の意思表示をすれば、それ以降通常の金銭債権として相続され、被害者の一身に専属するものではないとしました。裁判例のなかには、被害者保護の観点から慰謝料請求の意思表示を緩和して、「残念残念」や「向こうが悪い」と言いつつ死んだ場合にも、慰謝料請求の意思表示がありとしました。その後、最高裁判所は、慰謝料請求権は、被害法益が被害者の一身に専属するのみで、単純な金銭債権として、意思表示の有無を問わず、当然に相続されるとしました。
     
  8. 判例のように、慰謝料請求権の相続を肯定する場合、相続された慰謝料請求権と遺族の固有の慰謝料請求権との関係が問題になりますが、判例は、両者は被害法益を異にし併存しうるとしています。ただし、実務上は、慰謝料額は裁判官の裁量により決定されることから、併存を認めたことにより、いずれか一方のみに比較して、金額に大きな差異が生じるわけではありません。

   記事作成 司法書士・行政書士  美馬克康

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  1.  
  2. 系譜、祭具および墳墓などの所有権は、慣習にしたがって祖先の祭祀を主宰すべき者が承継するのが原則です。系譜とは、家系図・過去長など祖先以来の系統を示すものです。祭具とは、位牌・仏壇・仏具・神棚など、祭祀・礼拝のように供するものをいいます。墳墓は、墓跡・墓碑だけでなく、その所在する土地(墓地)の所有権や墓地使用権を含みます。ただし、墳墓に含まれる墓地の範囲は、墓石などが存在する墳墓と密接不可分の範囲に限られます。
     
  3. 祭祀財産は、「祭祀を主宰すべき者」が承継します。祭祀主宰者は、第一に被相続人の指定、第二に指定がない場合はその地方の慣習、第三に指定もなく慣習も明らかでないときは、家庭裁判所の審判により定まります。祭祀主宰者の資格に制約はなく、相続人か否か、親族関係の有無、異同は問いません。通常は一人であるが、特段の事情があれば、二人を共同の承継者としたり、系譜、祭具、墳墓の承継者を別人とすることもできます。
     
  4. 被相続人による祭祀主宰者の指定の方法も限定はありません。すなわち、生前行為、遺言・書面・口頭、明示・黙示など自由です。要するに外部からその意思が推認されれば足ります。また、慣習は、被相続人の住所地をいいますが、出身地や職業に特有の慣習があれば、それによります。家庭裁判所が指定する際は、被相続人との身分関係、過去の生活関係・生活感情の緊密度・承継者の祭祀主宰の意思や能力・利害関係人の意見などを総合して判断されます。祭祀は、死者への愛情、感謝の心情からなされるものであり、血縁よりも実際上こうした心情をより強く有する者を選ぶべきです。なお、相続人の合意により、承継者を指定できるかは、裁判例が分かれています。もっとも、祭祀承継者の指定は、調停による解決が可能です。
     
  5. 祭祀財産の承継には、相続の承認や放棄の規定がないため、承継の放棄や辞退はできません。しかし、祭祀をなす義務を負うわけではなく、また祭祀主宰を理由に相続につき特典(特別の相続分や祭祀料の受領)も認められません。もちろん、被相続人が、相続分指定、遺贈や生前贈与をすることは差し支えありません。祭祀財産の所有者は、それらを売買、贈与などを自由に処分することもでき、遺贈もできます。
     
  6. 遺体・遺骨は、他の一般の有体物とは異なり、所有権を認めるにしても、性質上埋葬管理と祭祀供養の目的の範囲内にとどまります。誰に帰属するかについては、判例は祭祀承継者としています。
     
  7. 死亡後に葬式が行われた場合には、葬式費用の負担、受け取った香典の帰属が問題となります。葬式費用の負担については、全相続人共同負担説、相続財産負担説、喪主負担説など、裁判例・学説でも分かれています。
     
  8. 香典は、相続財産ではなく、葬式費用などの遺族側の負担の軽減のための贈与と解されており、葬式費用に充当することは問題ありません。ただ、余剰が出たときに、相続財産に準じて、分割対象とするかは、学説が分かれるところです。

   記事作成 司法書士・行政書士  美馬克康

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  1.  
  2. 相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属します(民法898条)。
     
  3. 債権の共同相続に関して、不可分債権は、遺産分割まで全共同相続人に不可分的に相続します。各相続人は、総債権者のために全部の履行請求ができ、弁済を受領できます。可分債権については、判例は分割承継をするという立場を採用しています。すなわち、銀行預金債権や貸金債権の場合、遺産分割を待たずに各共同相続人の相続分に応じて、当然に分割されると解釈しています。最高裁判所の判例平成16年4月20日は、次のように解しています。「共同相続人の一人が、相続財産である可分債権(貯金)につき、自己の相続分を超えて権限なく権利行使をした場合、当該相続人に対して、他の共同相続人は、不法行為にもとづく損害賠償または不当利得返還請求権を行使できる」としています。
     
  4. なお、金融機関の相続預金の払い戻し実務は、相続財産中の預金債権につき、共同相続人の一人が、遺産分割前に払い戻し請求をした場合、各人の相続分の範囲内でも応じていません。超過支払いや相続人間でのトラブルに、事実上巻き込まれるのを回避するためです。したがって、遺産分割前でも、相続人全員からの払い戻し請求があれば応じています。また、判例上は、訴訟になれば相続分に応じた払い戻し請求が認められます。
     
  5. 可分の金銭が遺産中に存在する場合、各共同相続人は、相続分の範囲内で金銭の引き渡しを求めることができるか問題となります。判例は、被相続人が多額の現金を残して死亡し、その金銭を保管中の相続人に対し、別の相続人が法定相続分に応じた金額の支払いを請求した事案において、遺産分割までの間は自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできないとしました。
     
  6. 不可分債務は、各共同相続人に不可分的に帰属し、各相続人は、全部につき履行すべき義務があります。たとえば不動産を引き渡す債務や登記手続きをなすべき債務です。
     
  7. 可分債務に関して判例は、各相続人は相続分により分割された範囲で金銭債務を負担すると解しています。しかし、学説の多くは、債権者保護の観点から、分割に親しまない性質上不可分としています。
     
  8. 連帯債務について判例は、各相続人は、相続分に応じ分割された範囲で債務を負担し、負担部分も分割され、本来の債務者とともに連帯して債務を負うと解しています。しかし学説の多くは、全部給付義務という連帯債務の「連帯性」は相続によっても維持され、各相続人は全額の支払い義務を負い、負担部分が相続分に応じて分担されると解釈しています。
     
  9. 相続開始後に、遺産である不動産が処分されたときの売却代金(債権)、消失したときの保険金請求権などのいわゆる代償財産は、相続開始後に発生したもので相続財産そのものではありません。そこで、これらを遺産分割の対象に含めてよいかが問題となります。学説、判例ともに分かれています。裁判例は、積極説優勢といわれています。ただし、最高裁判所は相続人全員の合意により、遺産中の特定不動産を第三者に売却した事案につき、その売却代金は、これを一括して共同相続人の一人に保管させて、遺産分割の対象に含める合意などの特別の事情がない限り、相続財産に属せず、各相続人はその持分に応じて個々に分割取得するとしました。
     
  10. 遺産からの法廷果実や天然果実を、遺産分割の対象とするか否かは、学説・裁判例とも意見が分かれています。積極説は、果実は遺産の自然的増大であり、遺産と一体であるとしたり、遺産とは別に、各相続人が各相続分に応じ取得する共有財産であるが、遺産の総合的再配分具体的公平などの実質的理由を根拠とします。他方、消極説は、遺産とは別の共有財産であるから、分割または精算は訴訟手続きによるとの理由から、また分割の訴求効の結果元本となる遺産を取得した相続人に帰属することを理由としています。最高裁判所は、遺産たる不動産の相続開始後の賃料債権につき、賃料債権は各共同相続人が相続分に応じて分割単独債権として、確定的に取得するとしました。

   記事作成 司法書士・行政書士  美馬克康

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  1. 民法は、単純承認の後、遺産分割までの共有状態における管理につき、規定をしていません。管理に関して、共同相続人間で合意がまとまる場合は、その合意にしたがいます。そうした合意がない場合の共同相続人による管理に関しては、次のように解されます。すなわち、保存行為は、各相続人が単独でなしうるし、管理行為は相続人の相続分に応じた多数決によります。また、目的物の変更ないし処分行為は、相続人全員の同意をえて、行うことができます。
     
  2. 保存行為とは、財産の現状を維持するために、財産の滅失や損壊等を防ぐ事実行為および法律行為をいいます。たとえば、相続不動産につき、相続人全員を名義とする保存行為や、相続による所有権移転登記、無権者が相続財産を不法に占拠、侵害している場合にその引き渡しまたは妨害排除の請求、相続財産につき無効な登記を有する者に対する登記抹消請求があります。
     
  3. 管理行為には、財産の利用行為(収益を図る行為)と改良行為(経済的価値を増大させる行為)とがあります。たとえば、遺産中の現金を銀行預金とするのは利用行為といえます。しかし、不動産の第三者への賃貸は、借地借家法や農地法などの適用により、返還請求が容易ではなくなる場合は、管理行為とはいえません。なお、多数の収益用物件の内の一室の賃貸は、管理行為とみてよいでしょう。借地借家法の適用のない賃貸借の締結のほか、賃貸借の解除、使用貸借の解除なども管理行為とされます。
     
  4. 目的物の変更や処分行為には、相続人全員の同意が必要です。同意が得られない場合には、遺産分割手続きによるほかありません。特定のものを相続財産の管理人に選任しその管理を委ねるには、全員の同意が必要です。相続財産である農地に宅地造成工事を施して非農地化するには、改良の範囲を超え変更にあたります。銀行の貸金庫の開扉は、内容物の処分や変更に結びつけかねない行為ですから、全員の同意を要します。
     
  5. 共同相続人の一人が、相続開始後遺産中の不動産を単独で占有使用する場合、相続分割合において過半数を有する他の相続人が、占有使用中の共同相続人に対し明け渡し請求できるでしょうか。判例は、少数持分権者も自己の持分にもとづき共有物を使用収益する権限を有し、これにもとづき占有するのであるから、多数持分権者も、当然にその明け渡しを請求できるものではなく、明け渡しを求める理由の主張立証を要するとしています。
     
  6. なお、明け渡し請求できない場合、単独利用が他の共同相続人に対して、不当利得となるでしょうか。最高裁判所は共同相続人の一人が、被相続人の生前から許諾をえて、遺産である建物に同居してきた事案について、次のように解しています。すなわち、特段の事情のない限り、業者間に被相続人の死後遺産分割による最終的確定までの間、引き続き無償使用させる使用貸借の合意(被相続人を相続した他の相続人が貸主、同居相続人が借主)が推認されるとしています。
     
  7. この判決を前提に、被相続人との関係や占有開始の事情などを考慮すると、次のような区別が有用であると学者が示しています。

    ① 第一に、被相続人の生前から許諾をえて同居し、相続開始後も継続する場合は、原則として使用貸借が推認され、明け渡し請求も不当利得返還請求もできません。
    ② 生前から同居せずに占有を継続している場合は、原則的に使用貸借契約が認められますが、生前からその成立が推認され、終期も遺産分割終了時とは限りません。
    ③ 相続開始後に占有を開始した場合は、使用貸借の成立を推認することはできません。多数持分の相続人が、少数持分相続人に対し、多数持分権を理由に明け渡し請求はできません。しかし、多数持分相続人が当該不動産の使用者を別の相続人と定め、占有中の相続人の使用を認めない決議をすれば、権利乱用でない限り、明け渡し請求ができるとする考えが有力です。もちろん、占有者の持分を超える部分は不当利得になります。

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