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1.相続人による相続放棄について詐害行為取消権を認めるべきか否かについてですが、判例は、相続債権者Xに関する事案で、相続放棄のような身分行為は、①既得財産を積極的に減少させる行為ではなく、②相続放棄について、他人の意思による強制的介入は認めるべきではないとして、否定説に立ちます。
2.相続人の債権者Yに関する事例については、東京高等裁判所の裁判例ですが、「もし、詐害行為としてその取消しを許すとすれば、その結果は、結局承認を強制することになるから、相続放棄の如きは、他人の意思によってこれを強制すべきではない」として、同様に詐害行為取消権の適用を否定しています。
3.なお、最高裁判所の判例でも、Yとの関係で相続人の相続放棄は、権利濫用とならないとしたのもあります。
4.なお、事実上の相続放棄にあたるような遺産分割協議が行なわれた事案において、判例は相続人の債権者による詐害行為取消権行使を認めており、これとの関係が、問題とされています。
5.学説は、従来の通説は、相続債権者Xと相続人の債権者Yとの区別をすることなく、詐害行為取消権の行使を否定していました。その理由は、判例と同じようです。
6.すなわち、①相続行為は身分行為であること、②相続放棄の自由に対して債権者が干渉することは望ましくないこと、③相続放棄は債権者の財産減少行為ではないこと、さらに、④相続放棄の遡及効を重視し、相続財産が放棄者の財産となることは一度もなく、債権者の債権の引当てとして期待すべき債務者の責任財産ではない、ことなどを理由とします。
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