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1.相続放棄申立権者に関しての、利益相反行為の判断について、判例は法律行為の種類・性質といった行為自体、あるいは外形から判断する形式的判断説に立っています。当該行為の動機・目的・結果などの具体的事情を考慮すべきとする、実質的判断説は採用していません。
2.なお、判例の形式的判断説と言っても、利益・不利益の判断において、当該具体的事情を考慮することを一切否定するものではありません。当該行為(相続放棄)の時点で、現在および将来生じ得る利害対立の可能性がない場合には、利益相反行為とならないことを認めたものである、との評価もあります。
3.学説には、共同相続人である親権者・後見人が、未成年者・被後見人全員とともに、相続放棄をしていれば、代理権濫用の問題は生じ得るとしても、利益相反行為とならないと解するものが多いようです。(ただし、親権者・後見人自身の相続放棄が先行あるいは同時になされるべきかは明確ではありません。)
4.民法第886条1項は、胎児に相続能力を認めており、胎児についても相続放棄を肯定する見解もあります。しかし、実務および多数説は胎児について相続放棄を否定しています。否定説に立ち、915条の熟慮期間も出生後に起算点が始まる、と解する立場もあります。
5.相続放棄の申述は、相続開始後、熟慮期間(915条)内に行われるべきですが、熟慮期間の起算点に関しては、議論もあります。
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美馬 克康(みま かつやす)
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