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1.相続放棄にも無効原因があります。相続放棄の申述が本人の意思に基づかず、他人により無権限で行われた場合、相続放棄が利益相反行為の規定に反する場合、また、法定単純承認該当事由がある場合になされた相続放棄は、無効です。
2.さらに、相手方のない単独行為である相続放棄に、意思表示の欠缺の規定(心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤)の適用があるかについては、検討の余地があります。
3.心裡留保・通謀虚偽表示の適用については、相続放棄は相手方のない単独行為であり、相手方の悪意や相手方との通謀を、想定することはできないように思われます。
4.判例は、相続放棄に関する事案ではないが、同様な相手方のない単独行為である共有持分の放棄や、相続分の放棄に関して、放棄により直接利益を受ける他の共有者や共同相続人と通謀して、虚偽の意思表示を行った場合に、通謀虚偽表示の類推適用を認めています。
5.学説も、おおむね判例と同じ見解に立つが、相続放棄の場合は家裁への申述の方式が採られている以上、心裡留保に基づく相続放棄に関しては、相手方の善意無過失が強く推定されるとの指摘があります。
6.相続放棄に関しては、動機の錯誤が問題になることが多いようです。通説・判例は、動機の錯誤は、例外的に動機が表示されて意思表示の内容になった場合に、民法第95条(法律行為の要素に錯誤があったときに無効)が、適用されるとの見解に立っています。
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美馬 克康(みま かつやす)
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